- 作者: 山尾悠子
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2000/06/01
- メディア: 単行本
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ゼラ泉くん(id:maaya331)に強烈に勧められたのだが、肝心の「どういう作家で、どういう作品を書いているのか」という説明をまるでしてくれなかったので、なんとなく詳しいに違いないという憶測でカタリさん(id:cataly)に聞いてみたところ幻想小説家で、さらに読み始めるなら本書がいいと勧められた。
非常に面白く読めたのだが、同時に不気味であるとも感じた。表現しづらいのだが、非常に描写が上手いのだ。超技巧、とでも言えばいいだろうか。言葉を用いて世界観を構成することにかけては右に出るものを許さない! とでも言うような著者の気概が見えるほどに、文章が達者なのだ。しかし、人の身にあっては叶わないような文章力を持って、何を描いているかというと、中身のない器のような空疎な何かなのだ。作品の多くで、この世界観が最後には崩壊する。主人公が絶望することもあれば、その世界に生きる人々が死に絶えることもある。しかし、そこに悲劇性は少なく、むしろ虚空に散りゆく砕け散った世界観がきれいだなあ、というよく分からない余韻だけが残るのだ。実に不気味な読書体験である。
実際に描き出されている世界観のみを考えるなら、小林泰三が類似作家に挙げられそうである。「ファンタジア領」が特に面白かった。