
- 作者: 三崎亜記
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2004/12
- メディア: 単行本
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【となり町との戦争のお知らせ】
開戦日 九月一日
終戦日 三月三十一日(予定)
開催地 町内各所
内 容 拠点防衛 夜間攻撃
敵地偵察 白兵戦
お問合せ 総務課となり町戦争係
主人公の勤務する会社へ行くには、となり町を通る必要がある。日常生活に支障をきたさなければいいが……と、彼は特に対策も手段も講じないまま開戦日を迎えてしまう。しかし予想に反し、戦争が始まっても町に変化はない。人々はそれまでと同じように生活しているし、剣戟の音が銃声が聞こえるわけでもない。ところが、首を傾げる主人公の元に役所から手紙が届いて……。
面白かった! 本書は第17回小説すばる新人賞受賞作なのだが、これだけ面白ければ、それは受賞するよと頷ける。五木寛之、井上ひさし、川本三郎、斎藤美奈子、高橋源一郎、豊崎由美、星野智幸、吉田伸子……錚々たる面子が、帯で、手放しで褒めているのだが、これも頷ける。だって、面白いのだから!
少し付け加えておこう。既読の読者に「本書をして面白いと言うのは不謹慎、もっと真摯に受け取るべき」と窘められそうだが、本書は文学としてよりエンターテイメントとして書かれている節が強い(リアリティが存在しないところなど)。したがって「面白い」という評価はむしろ正当だろう。しかし、エンターテインしておきながら、そうしていることを巧妙に押し隠している(リアリティがあるように見せている)のが、本書を引き立てている重要な要素であり、しかもそれが上手く機能しているのだからずるい。