先日『文学賞メッタ斬り! 2007』の書評で面白いものを見つけました。
文学賞の選評がエンターテインメントであることを知らしめた功績は大きい。
http://d.hatena.ne.jp/pnu/20070626/p1
なるほど! と思わず膝を打ってしまいました。これは確かに一理あるかもしれません。
秋山がはじめて芥川賞と直木賞の存在を意識したのは、第130回(2003年下半期)のときです。今でも芥川賞を綿矢りさと金原ひとみが受賞し、直木賞を京極夏彦と江國香織が受賞し、テレビでインタビューを受けていたときのことを覚えています。この頃はちょうど、佐藤友哉が『新潮』に、舞城王太郎が『群像』に載りはじめたころで、ことさら純文学という領域に興味を抱いていましたし、京極夏彦は好きな作家のひとりでした。
で、第130回芥川賞&直木賞の結果が発表されたのが2004年1月、その2ヵ月後に大森望と豊崎由美の共著『文学賞メッタ斬り!』が刊行されました。一も二もなく飛びついた秋山がその本に見たのは、芥川賞や直木賞に代表される各種文学賞を受賞した作品が、必ずしもレベルが高いから受賞したとは限らない、という衝撃の事実でした。また、そこには各種文学賞の癖や方向性を面白おかしく紹介し、文学賞を競馬のレースのように楽しむ方法も紹介されていました。
純文学の領域では芥川賞が、エンターテイメントの領域では直木賞が、おそらくはもっとも知名度と権威を持っている賞でしょう。これらの賞を受けていない作家は、紹介の欄に「小説家」としか記載されませんが、賞を受けたことのある作家は「芥川賞作家」であるとか「直木賞作家」と記載されます。芥川賞を受賞できるかどうかは新人作家にとって生き残れるか否かの境い目ですし、直木賞を受賞できるかどうかはひとつのゴールに辿りついたと言えるでしょう。売り上げの面でも大きな差があります。これらの賞を受けているか否かによって、その作家が活動できる場は大きく変わりますし、ファンにとってもその作家の自由度が上がることは望ましいことでしょう。
そんな文学賞を、授賞式の前に「このひとが受賞するに違いない」とみごと言い当てることができたら、ちょっと格好いいですよね? で、百発百中とまではいかなくとも、そこそこの命中率を誇っているのが、前述のメッタ斬りコンビのお二人、大森望と豊崎由美です。さて、そのおふたりの発言をひとつご紹介、
「このゲームには必勝法がある」*1
だそうです(やや意訳)。メッタ斬りコンビのお二人によれば、芥川賞と直木賞とは特定の条件を満たした作品が受賞する文学賞であり、それは極めて論理的に推理することができるそうです。しかし、もしそうだとすれば、どうしてお二人はいつも芥川賞と直木賞の受賞作を、完璧に言い当てることができないのか? それは、選考委員がときおり見せる気まぐれが、文字通り、予想を許さないからだそうです。そういったわけで、十中八九、このひとが受賞するだろうと当たりをつけていながら、しかし蓋を開けてみたら違った……というのは、往々にしてあることです。
芥川賞と直木賞を受賞するのに必要な条件……に関してを、ここで説明することは避けます。非常に長いですし、秋山自身は同じ考えを持っていないので。その代わり、それが書かれている本を紹介します。以下の三冊です。
- 作者: 大森望,豊崎由美
- 出版社/メーカー: PARCO出版
- 発売日: 2004/03/18
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 104回
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- 作者: 大森望,豊崎由美
- 出版社/メーカー: パルコ
- 発売日: 2006/08
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 18回
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- 作者: 大森望,豊崎由美
- 出版社/メーカー: PARCO出版
- 発売日: 2007/05/10
- メディア: 単行本
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とは言え、それが悪いこととは限らないと思うのですよね。どのような動機であれ、芥川賞や直木賞が注目されることは出版業界にとって悪いことではないと思います*2。したがって『文学賞メッタ斬り!』が文学賞にもたらした何かは、言うなれば功罪ですかね。
と言うわけで、桜庭一樹や森見登美彦、万城目学のファンで「なんか私の好きな作家が直木賞とかいうのにノミネートされてるけど、これってどういうこと!?」という方は『文学賞メッタ斬り!』を読まれてみてはいかがでしょうか? 同賞に関してが分かりやすく書かれていますし、より結果が楽しみになると思います。第137回芥川賞・直木賞メッタ斬りや直木賞のすべても参考になるかと思われます。