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恵久地健一『濡れるのは裏側の瞼』


濡れるのは裏側の瞼
オンライン文芸マガジン『回廊』第12号所収


作者:恵久地健一
分量:原稿用紙55枚
発行日:2007年8月15日
発行元:文芸スタジオ回廊

 盲目の少女・赤誠メリイ。全世界を巻き込むような大きな戦争を経てから、人々は地下のシェルターで暮らすようになった。暗闇のなかで赤誠メリイは、小説に触れることでせかいを知ろうとする。そんな慎ましい生活を送っていた彼女に、あるとき転機が訪れる。なんと目が見えるかもしれないようになるのだという。赤誠メリイはその治療に応じたがしかし……。
「世界の終わり」特集に寄せられた1編。完成度の高いSF小説を書くことで知られる恵久地健一さんの久々の新作は、大戦争によって文明が壊滅した後のせかいを描いたもの。地下シェルターでの暮らしは、少女の落ちついた口調によって丁寧に説明され、すんなりと作品の雰囲気に溶け込むことができるだろう。目を見張るのは主人公の赤誠メリイが、目の治療を受けてからの後半。畳みかけるように明かされる真実の猛攻には、思わず息を呑んだ。