雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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木曜日に松本清張記念館を訪問

 あまり熱心な松本清張の読者ではありませんが、足を伸ばせば届く範囲にあったので伸ばしてみました。九州は小倉駅から徒歩10分。
 小倉城小倉城庭園、松本清張記念館の3つに入場するのであれば700円チケットが効率的ですが、時間と興味の問題から、500円支払って入場。平日の夕方という時間帯からか、他に観光客はいません。革靴が板張りの廊下を叩くのを聞きながら、まずは、最初の展示室1に入りました。

展示室1

 足を踏み入れた瞬間に驚きました。
 吹き抜けの空間に、松本清張の著書が面陳されてあるのです。文字通り圧巻です。ガラスの向こう側にあるのは、何十年も前に刊行された本です。今とは比べ物にならないほど地味な表紙で、使われてある紙質も、なんとなく悪そうです。しかし、それ故に、時代性が感じられ、さらに余計な情報がないので「面白そう!」という気配が伝わってきます。
 残念だったのは、上の方が見えないことですかね。吹き抜けなので、上の方にも展示されてあるのですが、下から見上げるのでは、そこにあることは分かりますが、充分に観察することは出来ません。どうせなら、縦に並べるより、部屋をぐるりと囲むように置いてくださった方が嬉しかったです。
 その後は、文芸館によくある年表的な感じの展示と、松本清張の仕事を幾つかのジャンルに分割し、それぞれにまとめある展示がありました。こちらもじっくり見たかったのですが、騒がしいツアー客がやってきたので早々に退散しました。

展示室2

 このエントリを書こうと思ったは理由は、松本清張記念館に、この展示室があったからです。
 思索と創作の城と銘打たれた、この一連の空間は、是非、すべての、小説を愛するひとに見て頂きたいと感じました。
 そこにあるのは、松本清張の自宅です。死んだときの状態のまま、東京は高井戸から、九州の小倉まで運んだらしく、何人も編集者を迎えたであろう玄関から始まり、彼らと会話したであろう応接室、そして実際に松本清張が原稿用紙に文字を綴った*1書斎に、書庫1、書庫2、書庫3……増築に増築を重ね、蔵書3万冊を擁する書庫が見えるように展示されているのです。
 これは、凄いことです。
 実に素晴らしいことです。
 そして、悲しいことです。
 家屋の見取り図を見れば、いびつであることに気づきます。増えた本を保管しておくために、書庫が増築されているのです。きっと、増えた分だけ、その都度、増築を繰り返していったのでしょう、家が変な形をしています。
 そんな変な建造物が、その変な形を保ったまま、東京から九州に運ばれ、誰でも見れるように展示されているのです。展示されてしまっているのです。
 本棚に眠っている3万冊の本を見て、自分でも驚いてしまったのですが、泣いてしまいました。だって、彼らは積読ですらないのです、読み手は、もうこの世にはいなくて、彼らは次の読み手の手に渡ることもなく、恐らくは、この展示室でずっと展示物として時間を過ごすことになるのです。
 そんなような想像をした瞬間に、なんだか切なくなって、とても物哀しくなってしまった次第。せめて、彼らのことを、今度、小説にして救済してあげたいですね……。

地階

 時間がなかったので、地階では、あまり長く過ごせませんでした。
 ただ、目に止まったのは読書室です。実際に触って、しかも読んでいい本として松本清張の本が、本棚にびっしりと詰め込まれていました。
 座り心地の良さそうなソファ席もありましたし、時間があれば、ここで1日過ごすことも不可能ではありませんね。というか、500円で入館して、セルフサービスのコーヒーを飲みつつ、いくらでも本が読めるなんて、近所にあれば最高のスポットですよ!

おわりに

 素晴らしい時間を過ごしてしまいました。
 本好きは、ここ、絶対に訪れた方がいいですよ。福岡から1時間くらい? 20分弱で行けるみたいでした。小倉駅から徒歩10分。ありです。

*1:実際に原稿用紙も展示されていましたが、非常に達筆でした。やや疲れはしますが、ちゃんと判読することもでき、丁寧に書いていたことが分かります