ここ1ヶ月ほどでリアル謎解きゲームを5回ほど遊びました。
遊んだのは、
(1)謎解きタウン主催「シャレード伯爵の潔癖で奇才な謎解き リンドー博士の不思議なモンスタータワー」
(2)Team Escape主催「Escape Room」
(3)謎解きタウン主催「シャレード伯爵の潔癖で奇才な謎解き マリン王国の失われた王冠と3つの鍵」
(4)謎解きタウン主催「シャレード伯爵の潔癖で奇才な謎解き 夜の水族館と水の都マリン王国の秘密」
(5)SCRAP主催「僕と勇者の最後の7日間」
以上です。
遊んだゲームをカテゴライズ
一口にリアル謎解きゲームと言っても、細かい分類があるというのを感じました。実際に秋山が参加したものは、以下4種類に分類できます。
(1)と(3)はゲームブック型。冊子型のキットを購入し、アトレ大井町店やしながわ水族館を個人で歩き回って、答えが分かったら有隣堂書店員や謎解きタウンの係の方に答えを申告したら謎解き成功ポストカードを貰えるタイプ。制限時間はなく、何なら日を分けて中断しつつ挑戦することも可能です。
(2)は小部屋型。エッセンのシュピール会場で遊ぶことができたもの。4人で小部屋に閉じ込められて、15分以内に4種類の鍵を見つけるというもの。
(4)は劇場型。閉館後のしながわ水族館を舞台に、個人で歩き回って、制限時間1時間以内の脱出を目指すもの。全体では100人くらいの参加でしょうか。
(5)はヒミツキチ型。SCRAPさんのヒミツキチと呼ばれる中型施設でで6人1チームとなって、制限時間1時間以内に脱出を目指すもの。全体では50人くらいの参加でしょうか。
いちばん面白かったのは夜の水族館
今のところ、抜群に面白かったのは、閉館後のしながわ水族館を貸し切って開催された「夜の水族館と水の都マリン王国の秘密」です。
夜の水族館を歩き回りながらヒントを集めてクイズを解いて、また次の謎へ……という体感は、けっこう楽しかったです。残念ながら最後の大謎に辿り着くことすらできず、途中で時間切れになったのですが、終了後に丁寧な解説があって、さらに首尾よく進んでいれば貰えるはずだった次の問題用紙も貰えて、帰宅後に検討することもできました。
感触としては、ひとつの閃きが得られれば、その次と、さらにその次も解けていたような気がするので、次の難解ポイントまでは行けたのではないか、くらいです。
ヒミツキチ型のモヤモヤ感
「僕と勇者の最後の7日間」は面白かったのだけれど、面白くないという不思議な感覚です。
6日間で準備を整えて、7日後に襲来するドラゴンを勇者と共に撃退すれば物語世界から脱出できるRPG風のストーリーは魅力的で、期待値は高かったのですが、あるいはヒミツキチ型という構造に慣れていないこともあり、若干のモヤモヤ感があります。
一言にまとめると物語に関与できないもどかしさ、でしょうか。
与えられたのは1時間の範疇では解ききれない謎でした。会場のいたるところに謎が書かれた紙が貼られており、謎が解けたら複数人いるNPCに報告しにいき、そこで小さな物語が展開されると同時に、新しい謎が与えられたりして……。
全体では、きっとRPGあるあるネタが散りばめられており、それを俯瞰することができれば面白いのでしょう。そう、俯瞰できれば……。
問題は、ここです。
1時間以内のクリアを目指すと、役割分担せざるを得ません、その結果に待ち受けていたのは、
・気がついたら進んでいるストーリー
であり、
・気がついたら解かれている謎
です。
秋山の参加したパーティには、リアル脱出ゲーム参加回数が10回ほどの方がいらっしゃって、その方が采配を振るい、首尾よく最後の大謎の手前まで行くことができ「後、もうちょっとでクリアできたのに!」を味わうことは出来たのですが、同時に「ほんとうに、そこまで辿りつけたと言えるだろうか?」という疑問もあります。率直に言ってしまうと、秋山は偶然、その方と同じパーティになれたので、そこまで辿りつけていましたが、1人だったら2時間あっても3時間あっても、果たしてそこに辿りつけたかどうか分かりません。それは、謎が解ける解けないではなく、すべての謎を、そもそも見ていないからです。
ヒミツキチ型の構造的欠陥
構造的欠陥、と言い切ってしまいますけれど、これは、ヒミツキチ型が、ヒミツキチ型である限り、避けられない問題であるように思います。つまり、このすべての謎に関与できず、気がついたら終わっていたというモヤモヤ感を参加者に与えないためには、参加者が、すべての謎、すべてのストーリーに関与できるよう(1)や(3)、(4)のように個人プレイ型に切り替えなければ、解決できないことでしょう。
しかし、そう考えたとき、ひとつの疑問を覚えます。
SCRAPは、どうして、このような欠陥を抱えたシステムを採用しているのでしょうか。そして、どうして、このようなシステムでのリアル脱出ゲームが、これだけ繰り返し遊ばれ続けているのでしょうか。
コンテンツからコミュニティ
少し前……と言うか、もう何年も前ですが、インターネットが発達して、ネット上で多くの人々が自由にやりとりできるようになったことで、アニメやゲーム、マンガなどの作品は、コンテンツとして、それ自体の面白さや楽しさよりも、同じ作品に触れ、同じ体験をしたひと同士で、その体験を共有できることそれ自体の方に、人々の関心が移っている。と言うような話を聞きました*1。
その例に乗っ取れば「単純に面白い作品」よりも「作品は面白くなかったけれど、その作品に対して覚えた面白くないという感情を仲間と共有できた体験」の方が価値があると言えるわけです。
この話を思い出したとき。もしかしたら。ヒミツキチ型のリアル脱出ゲームというのは、つまりコミュニティとしての面白さにフォーカスを当てた作品なのかもしれない。そう気づきました。
仲間同士で感想を共有することによって作品は完成する
リアル脱出ゲームには、テーブルひとつ丸々を予約できるグループチケットというのがあります。そのチケットを使えば、完全に仲間内だけでひとつの作品を楽しめるわけです。
仲間内でリアル脱出ゲームに挑めば、終わった後「ちょっと食事にでも行かない」と提案が誰かから上がることは、まあ、ありうる話でしょう。さらに、その場でゲームの感想が、ネタバレなしで話されることも、ありうるでしょう。
そう、この瞬間です。面白さの光が分厚い雲を突き抜けて、差し込んでくるのは。
この瞬間にリアル脱出ゲームは完成するわけです。
すべての謎に関与できなかったモヤモヤ感は、全プレイヤの間で同時に払拭され、すべての物語が共有されたことで、RPG風のストーリーが過不足なく浮かび上がり、企画制作した人間の意図が浮き彫りになり、作品が「部分的にしか触れられなかったので、よく分からなかったもの」から、「100%分かる面白いもの」へと姿を変えるのです。
想像するだけで面白そうです。
ヒミツキチ型のリアル脱出ゲームの楽しみ方、それは身内だけで参加すること、そう言えるでしょう。
もうひとつのアプローチ、個人での挑戦
「だが、ほんとうに、そうなのか?」と自分自身に問いかけたとき、チームとはまったく対極にある、個人での挑戦もまた面白いのではと気づきました。
ヒミツキチ型の構造を理解していれば、企画制作する人間が、どのようなデザインで謎を仕掛けてくるかも、ある程度は読めるようになるのでしょう。6人で1チームを組んだとき、6人全員が熟練……と言うか、SCRAPのスタイルに習熟し、馴化したプレイヤであるならば、息を合わせるまでもなく、全員、バラバラに情報収集と小さい謎解きに走り、全員同時に戻ってきて情報交換をして、また次の謎へと向かっていくことでしょう。
適切なタイミングで自分の得た情報をアウトプットして、他のプレイヤからもたらされる情報をインプットできるように慣れてしまえば、ゲーム終了後の打ち上げタイムを待たずに、ゲーム全貌を見渡す能力を身につけることができる。ような気がします。
どうでしょうか?
ほんとうに、そんなにうまくいくのでしょうか?
いくような気もしますし……やっぱり、個人での参加よりも、グループでの参加の方が比較にならないほど面白いような気もします。分かりません。まだ。
さらなる研究に向けて
とりあえず、リアル脱出ゲーム歴1ヶ月の秋山が考えたのは、ここまでです。
実際にグループチケットを取って6人1チームでヒミツキチ型を体験してみたいと思いますし、10人で1部屋に閉じ込められるアジト型は未体験なので*2、機会を見つけて試してみたい、と言うか、試させていただきたいと思います。
他の団体による謎解きも、挑戦していってみたいです。
とにかく、このリアル謎解きゲームという概念そのものに対する関心度が高まっています。とりあえず積んでいた『リアル脱出ゲーム 公式過去問題集』と『十人の憂鬱な容疑者 素敵なパーティ、死体がふたつ』を遊んで基礎力を高めると同時に、どんどん謎という謎に臨んでいこうと思います。オススメ情報、お待ちしております。よろしくお願いします。
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十人の憂鬱な容疑者 素敵なパーティ、死体がふたつ (脱出ゲームブック)
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