雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

710

「Pの妄想」「Fの告発」「Yの誘拐」以上、三つの短編からなる短編集。
 そもそもにして、本書を面白いと言ってしまうことからネタバレは始まるのではないだろうか。歴戦のミステリ読みであれば、「Pの妄想」と「Fの告発」にはまず満足できない。それなりのレベルを越えてはいるが、それまでだからだ。となると、事前に本書が面白いと聞いてしまっていた者は、「Yの誘拐」に期待を掛けてしまう。そして法月綸太郎のある傑作を彷彿とさせる切り口に、期待が高まらないわけがない。ましてや、その期待は応えられてしまうのだ。最初の二作が持っている構造を逆手に取るほどに見事な結末は、素晴らしいの一言。傑作だよ、これは。
 唯一、不満があるとするならば記号のこじつけ。P・F・Yがそれぞれ何を意味しているか終盤でさらりと流しているのだけれど、これが実に作為的で鼻につく。このセンスは、もう少しどうにか出来なかったのだろうか。