スクウェアエニックスの新作アドベンチャー『春ゆきてレトロチカ』を遊びました。
1人用の"新本格"ミステリーアドベンチャーと銘打たれた作品です。
ネタバレには配慮していますが、気になる方は回れ右推奨です。
ゲームの概要
PS4/5、Switch、Steamで発売されている実写が特徴の推理ADVです。
私はSwitch版を遊びました。
公式から「プレイ動画の公開や配信の全て、並びにその他ネタバレにつながる投稿を禁止としています」と強めのメッセージが出されています。
ゲームの感想
激烈に面白かったです。
傑作中の傑作であることは強く主張したく、2022年の代表する作品のひとつですし、なんであれば2020年代という枠で見ても、歴史に残る作品であると確信しています。
ただ、この評価に至るかどうかは、かなりプレイヤー適性が問われます。
感覚的に、多くのプレイヤーにとって、本作はあくまで良作止まりではないかと感じます。
ストーリーだけ見れば傑作、操作性も含めれば良作、そもそもアドベンチャーゲームをゲームと定義していない、推理ADVに興味がないという層であれば凡作という評価もやむを得ないでしょう。
では、どういう層にとって本作が傑作なりうるのかと言うと「新本格」という言葉に並々ならぬ思い入れを持っている層です。
唐突な自分語りで恐縮ですが、わたしは、いわゆる京極世代です。
小学生の頃からミステリでは、赤川次郎、西村京太郎、島田荘司を読んでいましたが、これは好んで読んでいたと言うより、親の本棚にあったという理由が強いです。
中学に入り、図書館で京極夏彦『姑獲鳥の夏』に出会い、森博嗣、清涼院流水とメフィスト賞の新作を追いつつ、並行して島田荘司まで遡り、そこから綾辻行人、法月綸太郎、我孫子武丸、歌野晶午、有栖川有栖、麻耶雄嵩と一気に読んでいきました。
こういった背景を持つ私にとって、本作『春ゆきてレトロチカ』は、間違いなく新本格ミステリの系譜に列なる最新作ですし、ここに来て新たなる地平を切り拓いた傑作でもあるわけです。
そう、ネタバレになっていないと信じたいですが、本作は、推理ADVとして傑作なのではなく、推理ADVを包含するミステリという広い概念のなかで傑作なのです。
従ってゲームというジャンルの中央から本作を見ると、わたしの評価の高さに首を傾げる方もいらっしゃることでしょう。わたしも、自分がミステリ読みではなく、ただのゲーム好きだったら「面白いは面白いけれど、傑作と叫ぶほどではない」と思ったことでしょう。
終わりに
ミステリ読みでもなければ、プレイ済みの方でもない方にとっては、なんのこっちゃ? という感想になってしまいました。
しかし、非常にパワーのある作品です。ぜひ、多くの方に遊んでいただきたいですし、青春をミステリに捧げたことのある方には、本作はあなたのための作品ですと強くオススメします。