スパイク・チュンソフトより発売された、打越鋼太郎シナリオによる推理ADV『AI:ソムニウム ファイル』を遊びました。
非常に面白かったので感想を書きます。ネタバレには配慮していますが、雰囲気バレはありますので、気になる方は回れ右推奨です。
ゲームの概要
主人公は警視庁の特殊捜査班に所属する伊達鍵。左目にAIを搭載した義眼を埋め込んでおり、彼女(?)を相棒として事件を追う。
ゲームの感想
激烈に面白かったです。
ストーリー、キャラクター、世界観、ゲーム性、ミステリ度、つきなみな表現で恐縮ですが、すべてが高い完成度でまとまっており、まさに理想的、かつ現代的な推理ADVでした。
なんと言ってもミステリとして優れているという点が、とてもとても嬉しいです。
犯人は何者なのか?
何故、被害者が生きているうちに左目をくりぬくのか?
メインとなる謎はもちろん、各登場人物たちの不可解な行動や、彼らがついている嘘など、それらすべてが過不足なく説明され、論理的な決着に辿り着くのに、これから遊ばれる方でミステリにこだわりがある方は、それはもう安心してプレイしていただければと思います。
クリアに要した時間は28時間。
唯一の難点としては、ちょっとスロースターターということくらいですかね。
畳み掛けるように真相が明かされる終盤は、まさに怒涛の展開で盛り上がることこの上ないのですが、ひたすら事件が発生、謎に包まれ続ける前半は、しんどいかもしれません。
わたしは最初が応太編だったのですが、応太編クリアのタイミングで、ようやく物語の輪郭が見え、そこから先は一気にプレイしました。
ソムニウムパートは、ちょっと面白いなと感じました。
いわゆる謎解きパートで、打越鋼太郎の過去作で言うと極限脱出シリーズでは、ノベルパートと脱出パートが交互に来ましたが、本作においてもアドベンチャーパートの合間合間に、重要参考人の夢世界にシンクして、深層心理に残された事件の手がかりを追うことになります。
問題は、このソムニウムパート、あくまで夢世界なので、現実の物理法則が通用しないのですよね。それによって、通常では、ちょっとありえない選択肢が、正解ルートだったりします。
ただ、これが単なる不条理かと問われるとそうではなくて、シンクしている人物の脳内においては、一定の法則性があるのです。従って、たとえば「この顔のないマネキンは、この人物に中では、どのように捉えられているのだろうか」みたいな想像をすることによって「そのマネキンに話しかければいいのか」はたまた「そのマネキンにナイフを突き立てればいいのか」正解に至る目測を立てられるのです。
前後の文脈から伏せられている事実を推し測る推理でも、法則を見抜き唯一解を導く謎解きでもない、まったく新しい思考体験でした。
ソムニウムパートについて、もうひとつ。
アドベンチャーパートはいわゆる総当たり系のコマンド選択なのでゲーム性に欠けますが、ソムニウムパートにおいては、夢世界にシンクしていられる時間に制限があり、擬似的に制限時間が設けられており、すべての選択肢を選ぶことができないという点も良いなと感じました。
QTEよりも、ゆっくり落ち着いて吟味できるので、こちらの方が好みですね。
キャラクターとしては、圧倒的に沖浦みずきが好みでした。
特に6日目のソムニウムパート。決めるのはお前じゃねえ、俺だ!! という強い覚悟を持って一発クリアしたので、もう片方の選択肢を採ったときの結果は知りませんが、圧倒的に良すぎるエンディングでした。
みずきが幸せになれば、もう他になにもいりません。
あ、でも瞳も幸せになってほしい……。
終わりに
と言うわけで『AI:ソムニウム ファイル』傑作でした。
エンディングも良かったですね。ハッピーエンド至上主義者なので、これ以上はない結末でした。
事前知識を得ないようチェックしませんでしたが、続編『AI: ソムニウム ファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』は2人主人公制で、片方の主人公は、みずきなのですね! 今から楽しみでありません。ではまた!