雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

1272『夜は短し歩けよ乙女』

夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

 SF系を中心に人気を博している森見登美彦の最新作、2007年本屋大賞にもノミネートされていることから書店員間での人気も高い。
「黒髪の乙女」に片想いしている主人公の先輩(彼女から見て。作中において名前は明かされない)は、彼女という城の天守閣に攻め入ることを避け、外堀を埋めることにだけ苦心している。京都を舞台とした様々な事件に、ふたりは交錯し群像劇のそれを為すのだが、最後に交わったふたりはいつも「あら先輩」「やあ奇遇だね」ですれ違ってしまう。主眼となるのは、やはり森見登美彦らしい、純粋なのだけれど、捻くれていて素直になれない男子の恋心。もう読んでいて堪らないのだ。最初のうちはしっちゃかめっちゃかな物語を楽しむだけだったのだが、やがて彼女の方も天然ながら主人公のことを意識していることが分かってきて、それなのに動けないでいる主人公を小突いてやりたくて仕方がなかった。毒は少ないし、恋愛にスポットが当てられているので一般性はかなり高いだろう。どれから取り掛かろうか迷っているひと向け。