雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

道尾秀介講演会レポート

 11月3日、早稲田大学にてワセダミステリクラブ主催で行われた道尾秀介講演会に行ってまいりました。遅ればせながら、そのレポートなど。インタビュアーは日下三蔵でした。以下、かんたんに。箇条書きで。

・子どもの頃は全然、本を読まなかった。高校生になって、横溝正史金田一耕助シリーズを読み始めたが、ミステリ自体はデビューするまでほとんど読んだことがなかった。
・そのためデビュー当時は読んでいたふりをすることが多かった。授賞式でも綾辻行人に「主人公が著者と同じ名前というのは、有栖川さんと同じだね」と言われたものの、有栖川有栖を知らなかった。
・19歳の頃から書き始め、10年経っても駄目だったら諦めようと思っていて、28歳のときに短編ではデビューできないと悟り、一念発起し長編を書き上げデビューできた。
・小説を書くからには活字でしか出来ないことをやりたい。例えば鏡。上下は逆にならないが左右は逆になる。しかし、実際に逆になっているのは、左右という言葉に他ならない。
・読者として想定しているのは、いつも自分自身。中途半端に最大公約数を狙うより、ひたすら自分を満足させることのできる作品を書きたい。
・『向日葵の咲かない夏』も『シャドウ』も、救いをテーマに書いた。
ペンネームは都筑道夫より。都筑道夫に自作を読んでもらうのが夢だったが、デビューできる前に亡くなられてしまった。
・ちなみに都筑道夫との出会いは古書店にて、探していた筒井康隆の本が見つからず、そのとき隣に並んでいたのが都筑道夫
・選考委員3人のうち綾辻行人は絶賛してくれ、桐野夏生唯川恵は批判するだろうなと思っていたら、まさにその通りの選評だった。
・オカルティズムとミステリは本来、相容れないものだが、霊と人との間のフーダニットが出来るのではないかと試してみた。
叙述トリックという言葉はデビューしてから知った。
本格ミステリ大賞の受賞後はミステリ作家として見られることが多くなったが、今までどおり自分自身を読者と想定し書いていくつもり。トリックはあくまで物語を彩るものであり、トリックが評価される現状には少し悩んでいる。
・『片眼の猿』は前作を上梓した直後に脱稿したのだが、タイミング的に、いま本にすべきではないという編集者の助言に従い、ひとまずケータイサイトにて連載することにした。したがって、ケータイで読まれることを前提に書いたわけではなく、結果的にそうなっただけ。
1月20日に『ジャーロ』で連載した『ラットマン』が光文社から刊行予定。『向日葵の咲かない夏』および『シャドウ』に出てきた刑事の息子、『シャドウ』の登場人物の父、『背の眼』および『骸の爪』に出てきたコーヒーショップ店員の息子などが登場する。
5月もしくは6月に『メフィスト』で連載した『カラスの親指』が講談社から刊行予定

 ワセダミステリクラブが作成したパンフレットに「道尾先生にベスト3を伺いました」と称して、トマス・H・クック『夏草の記憶』、都筑道夫怪奇小説という題名の怪奇小説』、W・P・ブラッティ『エクソシストの3冊がオールタイムベストとして発表されていました*1

夏草の記憶 (文春文庫)

夏草の記憶 (文春文庫)

エクソシスト (創元推理文庫)

エクソシスト (創元推理文庫)

 また、質疑応答の時間に、ミステリのイチオシを教えてくださいという質問に「こういう質問はよく受けますが、毎回、違う作品を答えています」と前置きしてから、久世光彦『逃げ水半次無用帖』と答えられていました。 全体的に非常に素晴らしい講演会でした。喋ることがお仕事というわけではない小説家の講演会は、声が小さかったり、受け答えがずれていたりすることが多いのですが、道尾秀介の語りは明快かつ面白く、会場から笑いが溢れることも多かったです。日下三蔵の質問も鋭いものが多く、雑誌等に掲載されているインタビューなどでは見かけない、レベルの高い回答を引き出していました。ワセダミステリクラブによる企画の進行も、さすがに堂に入ったもので、熟練度の高さが伺えました。来年も日程があえば是非に、参加したいと思います。

*1:なお、順番はつけられず、1番の作品というのはないそうです