雲上四季〜謎ときどきボドゲ〜

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

作家志望はもう少しレーベルを意識するべし

 同人活動をしていたり、作家志望を対象としたサイトや掲示板を見ていると、奇妙な行動を取っているひとに出くわすことがあります。以下、その会話を再現してみました。

秋山「日記で書かれていた電撃文庫応募計画はどうなったんですか?」
某氏「いやあ、実は頓挫しました。仕方がないのでファミ通に送ろうと思っています」
秋山「えんため大賞のことですか? 締め切りいつでしょう?」
某氏「4月30日……だから、後、2週間ぐらいです」
秋山「まだ書き終わってないんですか?」
某氏「ええ、まあ、ははは」

秋山「お久しぶりです、最近は調子どうですか?」
某氏「上々ですよ。先週、富士見に送って、いまはガガガ用のを推敲中です」
秋山「相変わらずお早いですね。推敲中ってことは、平行しても新作も?」
某氏「スーパーダッシュ用のを書いてます。余裕があったらHJも送ろうかと思ってますけど」
秋山「いやあ、ほんと早いですね。第二の日日日になれますよ」

 さて、いきなりぶっちゃけてしまいますけれど、プロの作家になるのは、それほど難しいことではないことのように思います。求められているタイプの小説を、一定以上の水準で書いて、かつ将来性があると感じさせることに成功したならばデビューは容易いでしょう。人間やってやれないことはないです。
 しかし、問題はデビューした後です。もっと言えば、何のために小説家になったか、です。
 小説家を志望して日夜、新人賞に応募するための小説を書いているひとたちは、なにもデビューして、自分の本を、書店に並べるために書いているわけではないですよね。当然、その先があるはずです。自分の書いた小説で読者を感動させたいであるとか、物を書いて暮らしたいであるとか、小説を書くことでしか生きていけないであるとか。では、そういった目的のために、作家デビューという手段を用いるべきだと思います。もっと言えば、目的に応じて、応募する出版社やレーベルを意識するべきだと思います。
 ライトノベルはニュアンスの表現が難しいので、まずミステリで説明させてください。
 たとえば実験的な叙述トリックを書いたとします。今までに類を見ない、斬新な仕掛けがありますけれど、いかにも落ちつきがなく若いです。しかしパワーはある。さて、どこに送るべきか?

1)江戸川乱歩賞
2)鮎川哲也賞
3)横溝正史ミステリ大賞
4)メフィスト賞
5)ポプラ社小説大賞
6)小松左京賞

 仮に上記のなかから選ぶとしたら、間違いなくメフィスト賞ポプラ社小説大賞の二択でしょう。完成度の高いものしか認めていない江戸川乱歩賞や、本格寄りの鮎川哲也賞横溝正史ミステリ大賞などはいかにも厳しいですし、SFの新人賞である小松左京賞など以ての外です。
 では、この例を踏まえてライトノベルで行ってみましょう。主人公はなんの変哲もない男子高校生です(ただし彼女持ち)。ある日、クラスに眼鏡の美少女がやってきます。転校生は「やりなおし」のちからを持っていて、そのちからで事故にあって即死してしまうはずだった主人公を救います。しかし、主人公の彼女の方は死んでしまいます。こんな感じの話を書いたとして、さて、どこに送るべきか?

1)電撃文庫
2)富士見ファンタジア文庫
3)角川スニーカー文庫
4)ファミ通文庫
5)MF文庫J
6)スーパーダッシュ文庫
7)HJ文庫
8)GA文庫
9)ガガガ文庫

 いかがでしょう? 秋山はそんなに熱心なライトノベル読みではないので、締め切りに応じて応募するところを決めそうですが、少なくとも、富士見ファンタジア文庫、つまりファンタジア長編小説大賞は避けると思います。理由は1、受賞しにくそうだから。2、受賞してもその後、自分の好きなものが書けなさそうだから。
 新人賞へ応募することって、ある意味で「出版業界」という大企業に就職することに等しいように思います。農業・建設業・製造業と業種があるように、ミステリがありSFがありライトノベルがあり、またそれらのなかにも細かい部署分けがあります。自分の方向性(作家になってやりたいこと)と、その出版社やレーベルの方向性(作家に書いてもらいたいもの)が一致していないと、とても不幸な事態に陥りそうです
 それを未然に防ぐために、ライトノベル作家志望は、いま一度、自分の方向性を考えなおし、応募するべきレーベルを見定めた方がいいと思います*1

*1:待遇や企業規模もありますしね。