雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

dot seventeen『4period』を読みました

『フリックドロップ』で有名なdot seventeenさん冬コミ新刊『4period』を読みました。
 サークルの紹介ページを見る限り「それは、四つの終わりの物語。」ということで「終わり」をテーマにした、4編からなる短編集です。掲載されている作品は「マーメイド、山へ」「ローランダ、空へ」「ガーゴイル、君へ」「スーベニア、夜へ」の4編で、それぞれの編に関連性はありません*1
 抜群に面白かったのは、4編目にして、唯一、広瀬凌さんが担当していた「スーベニア、夜へ」。これは面白かったです。
 スーベニアというのは主人公の男性の名前なんですが、彼がまったくちからのない吸血鬼なのです。未だかつてひとりの血を吸ったこともなく、蝙蝠や霧に化けることもできず、魔法を扱うこともできなく、流水は渡れず、にんにくは苦手。。それでも、永遠に生き続けることはできるため、人間社会に溶け込むことはできず、町から町へと転々と流浪生活を続けている様が描かれています。本編は、そんな彼が、ある町でしばらく時を過ごすのを描いているのですが、これが大変、良いのです。
 吸血鬼を題材にした作品が面白いのは、吸血鬼が無限の時を過ごすことができるからだと思うのですよね。茫々と続く無限の時間性がもたらす無為性、虚無性、それらが吸血鬼を美しく引き立てるように思います。で、それらがきちんと描かれているのがこの作品。結末も落ち着きに溢れたもので、読み終えた後ものんびりと余韻を味わうことができました。
 もう一編、挙げるならば「ガーゴイル、君へ」も面白かったです。こちらは、どちらかと言うと意欲作に部類されるもので、挑戦しようとしていることがあまりに高度で、残念ながら著者の技量が追いついていないように感じられました。
 さらりと、かつ分かりやすく説明すると、主人公は非常に能力の高い悪魔だったのですが、とある理由から感情その他、不要なものを自分から出してしまい、使い魔のかたちにして使っているのです。このことによって主人公の知性は、ずいぶんと下がり、能力もかなり軽減されてしまっています。語り手の口調や表現が稚拙なのが、余計に、悪魔の元来の能力の高さを感じさせます。……うーん、ちょっと違うかな。うまく説明できませんね。これは実際に読んでもらわないと、伝達不可能な面白さだ。
「マーメイド、山へ」と「ローランダ、空へ」も面白かったです。

*1:ある作品とある作品だけは、微妙にリンクしているような記述がありますが、遊び心程度です。