雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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君は零狐春の刺違と刺し違えてもいいし、刺し違えなくてもいい

 零狐春が開催したイベント『刺違』に含まれる、ふたつのリアル謎解きゲーム「FOX CRAZY QUIZ」「超面白! 宝探しゲーム〜隠し財宝を見つけ出せ〜」の感想です。両公演はネタバレ解禁されているので、ネタバレに対する配慮は行っていません。むしろ、積極的にバラしに行っています。

【決闘公演『刺違』とは?】
零狐春が2チームに分かれて謎解きゲーム公演(ホール型60分)を制作。
2つの公演を連続でプレイした後、投票によりどちらが面白いかを決します!敗北チームの公演は即ネタバレ解禁となります!


【チーム筆】
リーダー:MagicPen(零狐春二代目代表)
タイトル:『FOX CRAZY QUIZ』
この春、謎解きは「バトル」に進化する。


【チーム春】
リーダー:常春(零狐春初代代表)
タイトル:『超面白!宝探しゲーム〜隠し財宝を見つけ出せ〜』
自然豊かな漆草村に遊びに来ませんか?楽しいゲームを用意してお待ちしています!

https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/0193k0ynds30.html

 零狐春というのは謎制作団体のひとつです。秋山は、ホール型だと「13 FAKE POKER」を、CUBE型だと「絶望解体ワカバクダン」と「BOX X」を、持ち帰り謎だと「ARROWS」と「四桁の解法」、そして代表のMagicPenさんの作られた持ち帰り謎「クリスタルキャッスルからの脱出」を遊んだことがあります。全体的にオサレでクールなデザインという印象です。
『刺違』は20人くらいいる零狐春が、10人と10人の2チームに分かれて、それぞれにホール型の公演を作り、プレイヤには両公演を連続して遊んでもらい、遊んだ後にどちらか片方に投票して貰うというイベントでした。

結果

「FOX CRAZY QUIZ」においてEET(エクストリーム・エグい謎・解くマン)は魅力的な存在でしたが、EETになって注目を浴びたくはなかったのでNEET(ノットEET)になることを選択してました(平たく言うと失敗です)。
「超面白!宝探しゲーム〜隠し財宝を見つけ出せ〜」において宝探しを放棄して埼玉に行っても良かったのですが、せっかくなので漆草村で隠し財宝を見つけることを選択しました(平たく言うと表ルート成功/裏ルート失敗です)。

成功率(秋山が参加した回)

「FOX CRAZY QUIZ」
 挑戦数:10チーム
 表ルート成功:3チーム
 裏ルート成功:0チーム
「超面白!宝探しゲーム〜隠し財宝を見つけ出せ〜」
 挑戦数:10チーム
 表ルート成功:8チーム
 裏ルート成功:0チーム

挑戦する前

「なんとなく企画として面白そう」そして「零狐春さんの公演は体験したことがないので参加してみたい」というわりとゆるい理由で申し込みました。

FOX CRAZY QUIZ

 まずはオサレな方からです。
 6人1チームとなって、EASY/NOMAL/HARD/SHINDOI/LEGENDと5種類の問題を解いて、解き終わったらiPadに入力して点数を稼ぎます。解き終えた問題は、他チームに送りつけることができて、送りつけられた謎を60秒以内に解くことができなければ60秒の失点となります。1問、他チームに送りつける毎に1スキルポイントが貰え、2〜10のスキルポイントを消費することで、様々なスキルを発動させることができます。また、何問か解き終えると新たな問題をスタッフから貰うことができます。最終的に上位3チームがEET(エクストリーム・エグい謎・解くマン)の称号を得て勝利となります。従って、10チーム中3チームは必ず成功する仕組みです。
 前半は好みの公演でした。制限時間内に小謎を早解きするのが好きなので、EASY/NOMALをさくさく解き、問題用紙の追加が貰えるまでの間に時間を掛けてHARDやSHINDOIを解いて、1チームに1人ずつ、ついてくださるスタッフさんに、EASYやNOMALの問題用紙を渡して、他チームに送りつけてもらい、スキルポイントを稼ぎ、どんどんスキルを発動させていきました。
 前半終了時点での順位は、たしか2位だったと記憶しています。ゲーム中も、1位から3位内を蛇行していたので、けっこう謎が解ける系のメンバーが運良く揃っていた様子です。


 前回ゲームにおいてEETになったAチームとFチームの方のインタビュー動画を見せられてから後半戦に突入します。後半では、他チームから300点奪うだとか、700点を削るだとか、けっこうエグいスキルが追加されました。
【謎が解けないチームを救済するために、派手な効果を追加したのだろう】
 と、勘違いしてしまいました。
 また、一時的に1位になったところ、他チームから凄まじい勢いで問題が送りつけられてきたのですが、その中に1枚だけ、スタッフが消すはずの、問題を送ってきたチームの書き込みが残っている問題がありました。
「これ、書き込みが消されずに残ってますけれど?」
 とメンバーのひとりがスタッフに確認したところ、
「私はルールに基づき、適切に処理しております」
 と、回答されたので、
(そう言えば、インタビュー動画の中に「スキルの数が2倍になった」という発言があった)
 と思い返しながら、
【他のチームは書き込みを残して妨害をするスキルがあるのかもしれない】
 と思いました。
 が、送られてきた問題を見ている内に、ラミネート加工された問題用紙に残されていたのが正答であることに気づき、
【書き込みを消してくださるスタッフの動きを制限する妨害スキルがあるのかもしれない】
 と、勘違いしてしまいました。


 その後も激しく順位が入れ替わる内に、このままではいけない! と考え、
「小謎を解くのを止めて、まだ着手していないLEGEND謎に取り掛かりませんか? (1/2)と書いてあるので、情報は不充分ですが、メタ解きできるかもしれませんし」
 と提案して、2〜3人で考えてみたのですが、まったく太刀打ちできませんでした。どうやら(2/2)がないと情報が出揃わず、解を導き出すのは絶対に不可能なようです。問題用紙を手に入れる手段は、ただひとつ、一定数の小謎を解くことで、スタッフから補充を受けるだけです。
【LEGEND謎の(2/2)が与えられるまで小謎を解きまくるしかない】
 と、勘違いしてしまいました。


 こうして、いくつもの勘違いを抱え、モヤモヤしたまま時間が過ぎてゆきゲーム終了。最終的な順位は5位、NEETになってしまいました。

FOX CRAZY QUIZ裏ルート

「見事、EETの称号を得られた上位3チームの皆さん、おめでとうございます。そして、4位以下の皆さん、残念でございました。しかしながら、皆さんは、ほんとうにEETになるチャンスがなかったのでしょうか? 皆さんが解くことができなかったLEGEND謎は、ほんとうに解けないものだったのでしょうか?」


 そこからの解説には、血の気が引くほど衝撃を受けました。
 自分たち以外の9チームはすべて敵チームだと思っていましたが、まさかその内の1チームが、実は味方チームであり、
【インタビュー動画におけるAチームの方とFチームの方は、それぞれ仲間で】
【仲間チームから送り込まれた問題だったからこそ、書き込みは消されていなかったわけで】
【その仲間チームがLEGEND謎の(2/2)を持っていた】
 なんて、まったく、これっぽっちも考えませんでした。
 完璧に虚を突かれたと同時に、気づくためのヒントは随所にあったし、秋山のいたHチーム担当のスタッフさんからは、
「Hチームさんは、Cチームさんにも問題を送っていたので、向こうも気づくチャンスはありました」
 と言われ、もう、ぐぬぬ……以外に言うべきことがありません。


 後半戦のデザインに感じていた理不尽さがすべてLEGEND謎のためにあったと分かった瞬間に、すべての不満という感情が、何故、自分は気づくことができなかったのかという悔しさという感情に、鮮やかに……ほんとうに鮮やかに塗り替わりました


 LEGEND謎……解きたかった……!

秋山チャート

要素 5段階評価
オススメ ★★★★★
探索
物量 ★★★★★
ストーリー
衝撃度 ★★★★★

超面白!宝探しゲーム〜隠し財宝を見つけ出せ〜

 続いて、ダサい方。
 こちらは正統派ホール型公演とも言うべき内容でした。小謎を解いてアイテムを貰って、そのアイテムを使ってスタッフさんと茶番を行って、また新たな情報とアイテムを貰って……と、お使い感のあるゲームでした。
 暗号が全身を使ったポージングで表現されており、そのポージングを再現することで次のステップに進むことが出来るという仕掛けで、全体的にわちゃわちゃ感のある公演でした。そして、この手の公演あるある問題としての渋滞。
 渋滞問題は、スタッフの限られている公演にはつきもので、この渋滞に巻き込まれ、発生した待ち行列に組み込まれると、大きな時間ロスが発生します。攻略方法は、ただひとつスピードです。
 小謎を早解きして、時にはメタ解きで工程で短縮し、それらしい答えが見えた瞬間にとりあえず見せてみる。こうして他チームに先んじてがんがんステップを進むことで、時間を有効活用することができます*1


 そんな感じで3位くらいのスピードで駆け抜けたのですが、中盤からものすごい気持ち悪い感が出てきて「え、なに? なにが起こってるの??」とビクビクでした。何故か、プレイヤたちを漆草村まで連れてきたツアー会社のガイドさんは死んでるし、不穏な放送が入るし、ゲーム開始時点に山ほど積まれていた野菜の入った箱は業者さんが運び出しているし……、


「やばいっすよ。このままだと失敗です。まだ使ってないヒントがあるはずですよ。たとえば……この地図! 我々、まだ娯楽室と金庫室にしか行ってないですよね? この米屋とか駐車場とかに行った方がいいんじゃないですか?」
「その情報、最初の小謎で使いましたよ」
「そうっすか。あ! じゃあ、あの野菜の入ってた箱。さっき業者が最後のひとつを運び出してましたけれど、あの箱って何か関係あるんですかね?」
「それも、最初の小謎で使いましたよ」
「そうっすか。じゃあ、後は、このヒトガタですかねえ。なんか生贄っぽいですし、この首を千切って、どこかにお供えするとか……?」


 とかなんとかやっている内にタイムオーバー。我々4チームは、漆草村の村人が考えた謎は解き明かし宝探しゲームに成功しましたが、その結果、優秀な人材であるとされ、生贄に捧げられ死んでしまいましたとさ。

超面白!宝探しゲーム〜隠し財宝を見つけ出せ〜裏ルート

 では、どうすれば良かったのか?
 それは、ツアーガイドさんの死体を見つけた時点で「超面白!宝探しゲーム〜隠し財宝を見つけ出せ〜」を続けることを拒否し、「超面白!宝探しゲーム〜隠し財宝を見つけ出せ〜からの脱出」をはかるべく、なんとか会場から脱出し、駐車場へ移動し、野菜の入っていた箱と一緒に、埼玉に出荷されることでした。
 まあ、確かに人が死んでるのに謎解きとかやってる場合じゃないですよね。

秋山チャート

要素 5段階評価
オススメ ★★★★
探索 ★★
物量 ★★★
ストーリー ★★★★★
わちゃわちゃ度 ★★★★★

投票

 秋山は「FOX CRAZY QUIZ」に投票しました。
 どちらも間違いなく面白かったのですが、前者は小謎がいっぱい解けて楽しかったこと。敵チームの中に味方チームがいるという裏ルートが斬新だったこと。そして何よりも、解けなくて悔しい思いをしたこと。
 一方の後者は、わちゃわちゃ感は確かに楽しかったけれど、よだかのレコード『バブルからの脱出』には劣ること、そして以前に、リアル脱出ゲームからのリアル脱出*2のネタバレを受けてしまっていて、それと裏ルートのネタが被ってるなと感じたからです。

両公演を終えて

「FOX CRAZY QUIZ」に投票はしましたが、「超面白!宝探しゲーム〜隠し財宝を見つけ出せ〜」も及第点を遥かに越えて、充分に面白かったです。また、どちらも失敗したわけですが、普段のリアル謎解きゲームに感じる悔しさや残念さはありません。
 通常のリアル謎解きゲームにおける構図は、謎制作団体VS参加者です。謎制作団体は一定のコストを投じて公演を作りだし、その公演を複数回、開催して投資を回収すると同時に、参加者に達成感/納得/悔しさ/楽しさを提供していきます。
 しかし、この決闘公演『刺違』は、謎制作団体VS参加者である以上に、謎制作団体VS謎制作団体でした。参加者は提供された謎を解くプレイヤである以上に、決闘する謎制作団体の優劣を見定める審査員でした。ですので、体感としては、コストや難易度を度外視し、お互いにお互いを凌駕する公演を作ろうとする謎制作団体の、本気の公演を間近で見極めることができた、です


 得難い体験でした。


「FOX CRAZY QUIZ」は、今回の形式を基盤に、より競技性を高めた別の公演が今後予定されているとのことですが、リアル謎解きゲームとしての「FOX CRAZY QUIZ」は、今回が最初で最後です。もちろんネタバレされた「超面白!宝探しゲーム〜隠し財宝を見つけ出せ〜」だって、今回が最初で最後です。二度と再演されることのない、一生で一回だけの『刺違』に参加することができて、ほんとうに良かったです

余談

「FOX CRAZY QUIZ」ですが、終わった後に聞いたのですが、チームメンバーのひとりがEEU(エクストリーム・エグい謎の答え・打ち込むマン)になってしまっていて、ぜんぜん楽しくなかったとのことでした。iPad重くてよく落ちる問題もありましたし、ここらへんは今後、是非、改善いただけると嬉しいですね。

*1:しかし、この方法には欠点もあります。それは、ときには小謎を放置して次のステップに進んでしまうので、使ったヒント/使ってないヒント管理が大変であることと、今、自分たちがどういう状況でどこにいるのか迷いやすくなる等です。

*2:ネタバレ回避のため嘘の公演名です