雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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青春ミステリの旗手が導く挫折の先

遠まわりする雛

遠まわりする雛

 米澤穂信の新刊遠まわりする雛を読みました。『氷菓』『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番』に続く、古典部シリーズ4冊目です。今回は初の短編集で『氷菓』後の事件から『クドリャフカの順番』後の事件まで、シリーズを縦断するような出来になっているのが興味深いです。青春ミステリの短編集としてだけでなく、ホータローの成長小説としても読めるのですよね。素晴らしかったです。以下、感想抜粋。全文はこちら

 おそらく作中の時系列順に並べられた短編は、実際にはバラバラの順番に書かれたにも関わらず、登場人物の成長が感じられるほどに、成長小説として読めるのだ。もちろん青春小説としても素晴らしいし、日常の謎としても素晴らしい。完璧。

 以下、この本を読んだ他のひとの感想。

 一本の校内放送から推理が繰り広げられる「心あたりのある者は」はタイトルも中身も秀越。国内ミステリでこんな良質の短編が読めるのは嬉しいなぁ。

http://d.hatena.ne.jp/juice78/20071005

 ああ長編が読みたいなと思っていたけれど、いざ読んでみると、これはこれでどうしてなかなか素晴らしいではないですか。一編一編コストがかかっています。

http://d.hatena.ne.jp/kenkaian/20071005

 特に書き下ろされたラストの短編「遠まわりする雛」と、それと裏表になるようなひとつ前の短編「手作りチョコレート事件」は素晴らしい。

http://d.hatena.ne.jp/architect/20071006

 そしてラストの「遠まわりする雛」 では……ああ! なんという青春! もうなんか読み終わった後も、最後のページが頭の中でリフレインして……折木の気持ちをトレースして……そしてたまらん気持ちになるのです。ああ!

http://d.hatena.ne.jp/asyminor/20071006

ベイリーの「四色問題」は傑作か駄作か

ベータ2のバラッド (未来の文学)

ベータ2のバラッド (未来の文学)

 ニューウェーブSFを集めた『ベータ2のバラッド』というアンソロジーを読みました。そこに収録されていたバリントン・J・ベイリーの「四色問題」という短編がすごいのです。どれぐらいすごいかと言うと『ロクメンダイス、』が100%KUROUだとしたとき四色問題」は4000%KUROUというぐらい。いやあ、世の中にはすごい小説があるものですね。
以下、感想抜粋。全文はこちら

 これはすごい。出だしは「変な文章だなあ」と思うぐらいなのだが、だんだん分からなくなってくるのだ。何度、同じ文章を読み直しても理解できない。運よく理解できたとしても、前後の文脈とまったく繋がらない。なにやら数学の四色問題に対してアプローチをかけているらしいのだが、もうなんだかこれっぽっちも分からず、やがてその意味不明さが一周し、分からないことが逆に面白くなってきさえするのだ。

 以下、この本を読んだ他のひとの感想。

 とにかく凄まじいまでの意味不明さで、ここまで来ると、文章の狂った様を笑って楽しむことができる。

http://d.hatena.ne.jp/Wanderer/20060627

 うわーわけわかんねえ。わかるけど、わかんない。でも面白かった。

http://d.hatena.ne.jp/funa-1g/20060708

ライトノベル発新感覚殺戮エンタテイメント

あるゾンビ少女の災難

あるゾンビ少女の災難

魔神館事件―夏と少女とサツリク風景

魔神館事件―夏と少女とサツリク風景

 あまり話題になっているような気がしませんが、これって電撃の単行本、富士見のStyle-Fに続く、角川のハードカバーってことですよね。特設ページがあり、こちらから冒頭部分と予告映像が見られるようです。
 池端亮は『みんなの賞金稼ぎ』や『BLOOD+』のノベライズがありますからライトノベル作家と言えますけれど、椙本孝思はアルファポリス出身なので、実質的には本書がデビュー作に近いですよね。ちょっと不安がありますけれど、クローズド・サークル物のミステリのようなので読んでみようと思います。

三人称小説だと思わせておいて一人称小説

 id:trivial:20070916:1189878262のコメント欄を経てから、三人称小説だと思わせて実は一人称小説でしたという作品を探していたのですが、もしかしたらこれが「最初の一作」かもしれません。と言うわけで『女には向かない職業』の訳者として知られる小泉喜美子の終期の短編集『殺さずにはいられない』。以下、感想抜粋。全文はこちら

 帯に「“粋でなければミステリーとはいえない”といつも主張し、実践してきた著者の傑作10編を収録した珠玉集」とあるのだが、確かにどの短編もどこかしらユニークで粋であったと言える。