雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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池袋ウエストゲートパーク

池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)

池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)

 池袋を舞台とした青春ハードボイルド。主人公のマコトは地元の工業高校を卒業した後、母親の経営している果物屋を手伝いながら西口公園でダラダラと日々を過ごしている。どのギャング団にも属していないマコトだが、責任感に重く人望を集めているゆえ、ときにはヤクザから人探しを依頼されることもある。池袋を他の誰でもない池袋のままにするため、マコトは今日も事件を解決していく。
 第36回オール讀物推理小説新人賞を受賞した「池袋ウエストゲートパーク」に「エキサイタブルボーイ」「オアシスの恋人」「サンシャイン通り内線」を加えた短編連作集。ドラマ化されたものを見てから興味を持ち、原作を手に取ってみたのだがあまりの違いに驚いた。ドラマ版では池袋に暮らす個々人に焦点が当てられ、それらを実にスマートに描いていたのだけれど、原作においてそれらは影をひそめていた。また、歯切れの悪い体言止めと断章構成から、読みつづけるのが苦痛でさえあった。けれど読み進めていくうちに、主人公にも感情移入できるようになり、筆致もリズム感溢れるようなものに思え、ぐいぐいと作品の中に引きずり込まれていく自分自身に驚きさえした。文庫版の解説は、池上冬樹。(2001年07月・文春文庫)