
ROOM NO.1301〈3〉同居人はロマンティック? (富士見ミステリー文庫)
- 作者: 新井輝,さっち
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2004/09
- メディア: 文庫
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ところで自分は後書きが好きな人間で、後書きがある作品の場合、後書きから読むことが多い。しかし、これは後書きから読む人すべてが抱えているジレンマだと思うが、後書きがあるかどうか確認しようとして、本編の最後の一文がどうしようもなく目に入ってしまうということが往々にしてある。ただ単に「夜が更けていった」というような風景描写なら大したことがないが、ミステリにおける最後の一撃(フィニシングストローク)であるとか、結末を容易く想像させてしまうイラストなどが目に入ってしまったときは、もう悲運としか言いようがない。そういうのを見てしまったときは、もう何も見なかったことにして、放りだしてしまう。
さて、この本についても自分は後書きから読もうとした。そして衝撃的な一文を見てしまう。なんと見開きで十文字にも満たないのだ。その言葉とは、
「あの、うらぎりものめ。」
思わず「来たあ」と口走ってしまった。八方美人の限りを尽くし、二股に三股に四股をも掛ける主人公に、ようやく天罰が下るときが来訪したのかと予感した。自分は投げ出すことではなく、喜び勇んで本書を読むことにした……が、何と三巻に至っても主人公は好かれる一方で相変わらずの絶倫っぷりを発揮している、最後まで。「あれ、おかしいな」と思っているうちに続いてしまい、それではあの思わせぶりな一文は何だったのかと本編に続く後書きを目に通してみたら……見開き二ページも使った「あの、うらぎりものめ。」という一文は、成功した他の作者への妬みだったのだ。おいおい。
本編に関して。
一巻を読んだときは実に低レベルだと感じ、二巻で少し迫ってくるものがあったが、三巻ではさらに腕を上げてきている。しかし、やはり登場人物たちの誰一人をとってもおおよそ信じられないぐらい世界観が狭く、彼氏彼女とエッチに励むことが人生の最終にして最大の目標だと声高に叫んでいる様は不気味だと思う。一巻が楽しめた人は二巻三巻も楽しめるだろうが、一巻が駄目だった人は二巻三巻も駄目だろう。
つまらない点が逆に面白い点であったりすることは往々にしてあることだが、本書における登場人物たちの世界観の狭さは、魅力的でありさえもする。と言うのも、恋愛やエッチすることを真剣に考えていないキャラはひとりもいないのだ。全員が全員、何らかの哲学を持ってそれに挑んでいる。いや、よくやるぜ作者と思わないでもないが。