雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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キリサキ

キリサキ (富士見ミステリー文庫)

キリサキ (富士見ミステリー文庫)

 通常のトリック、例えば密室であったりアリバイであったりは、登場人物の一人として登場する犯人役が、警察や探偵役に対して用意するものである。そして、登場人物には関与しえない、作品内世界とは関係のない次元で展開されるトリック、例えば物語を語る作者が、物語を読む読者に対して用意するものを叙述トリックという。これとは別に、SFに多いのだが登場人物が同じ時間をもう一度、経験するループ物や、他の世界に行ってしまうパラレルワールド物というのがある。どちらも作品内世界で展開される事象である。この事象だけでも魅力的だと言うのに、それを死角として読者のふいを突くレベルの高いトリックが存在する。それを秋山は、四次元殺法と呼んでいる。
 本書はその構成と真相から察するに、殊能将之ハサミ男』の影響を受けていると思う。叙述物としては、『ハサミ男』を越えるには至らなかったが、時間の概念を用いれることと、幾つものどんでん返しを用意することで、かなりミステリとしての完成度は高くなっている。富士ミスだから? ライトノベルだから? そんなことは理由にはならない。ミステリ読みは本書を読まないと駄目だろう。