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ありきたりの狂気の物語

ありきたりの狂気の物語 (新潮文庫)

ありきたりの狂気の物語 (新潮文庫)

「あとがき風に二、三のこと」と冠された解説を読むと、この短編集がどういったものであるか、どのように楽しむべきものであるか大体、把握することができる。少し抜粋しよう。

 一九六七年に「勃起、射精、露出、日常の狂気にまつわるもろもろの物語」というコピー調のタイトルをつけて世に出た。

 長くて十数ページ、短いのは五、六ページという短編、掌編の群れ。彼(らしい人物)が出てくるものもあれば、そうでないものもある。登場人物が不在で、作者が一方的に(麻薬と称されているものについて)まくしたてる作品もある。

 まあ、そういうわけで、作品の大半は不条理や意味不明に分類される作品であった。けれど、中には確かに日常の中に紛れ込んでいても不思議でないものがある。特筆したいのは、それらが別段、狂気的に、ホラー小説的な手法で書かれているのではないという点だ。つまり、極めて淡々と麻薬や酒やセックスが語られているのだ。「俺はこんなにも社会から逸脱している。俺はこんなにも特別なんだ。だから俺を見てくれ」なんて叫ぶ人も、ブコウスキーに掛かっては、通りを歩く一般人だろう。匂いたつような作品群であった。