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みんな元気。

みんな元気。

『新潮』に掲載された短編四編に書き下ろし一編を加えた短編集。「矢を止める五羽の梔鳥」と「スクールアタック・シンドローム」だけ既読だった。
 表題作「みんな元気。」を読んで、思わず引用したくなってしまうぐらい印象的な科白があった。

「家族なんて入れ替え可能だっつうの」

 衝撃的である。「みんな元気。」はその題名どおり、とにかく元気いっぱいしっちゃかめっちゃかな内容だった。全力で両腕を振り回しながら大爆走しているようなイメージ。家族愛が根底のテーマとしてあって、家族の代替から物語が始まって、終盤には複数の可能性が同時に存在する状況下において、どの可能性を選択するかと主人公が迫られる場面がある。ここでエグいのが、三人の夫の中からひとりを切り捨てた瞬間、その夫との間になしていた子どもが血を噴いて倒れる。がしかし、僅か数秒で彼らに対する愛が主人公の中から失われ、子どもは代替可能だったと明かされてしまうシーン。勿論、その直後にそれに対するアンチテーゼもあるのだが、いやはやエグかった。
「Dead for Good」「我が家のトトロ」「スクールアタック・シンドローム」は、それぞれそれなりに楽しめた。「我が家のトトロ」の『となりのトトロ』考察は中々、興味深く、あのアニメが子どもに与える影響を考えるとちょっと恐くもある。「スクールアタック・シンドローム」は『新潮』で読んだときも思ったが、やはり素晴らしい。問題は「矢を止める五羽の梔鳥」。初めて読んだときは何かの続き物かと思ったが、この本の中でも特に続き物として扱われていないので、単独作品であるようだ。それなのにこの難易度の高さは何だ? 再読だったが、今ひとつ分からなかった、残念。