- 作者: 三枝零一,純珪一
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2005/09
- メディア: 文庫
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その理由は色々あるが、ひとつを選ぶならば、やはり世界観だ。ある事件により世界は滅び、人々はシティと呼ばれるシェルタのような閉鎖環境に身を寄せ合って生活している。しかし、そのシティは維持するのに魔法士と呼ばれる人種の脳が必要で、ひとりの魔法士を犠牲に、多くのふつうの人間が生活できる。しかし、その事実を一般人は知らされていない。魔法士は秘密裏に生産され、闇から闇へと、人々に消費されてゆく。「果たして私たちに生きる意味があるのか」「この世界の何処に私の居場所はあるのだろうか」「彼女一人を救うために、シティに住む一千万人を見殺しにするのか」――このような科白が平然と登場するのだ。しかし、驚くべきことに、こういったある意味でくさい科白が、まったく浮いていないのだ。それは、描かれている世界観があまりに完成されているから。何処までも基本に忠実で、衒いがなく、そのために、とても素晴らしいのだ。
電撃で好きな作家を十人選ぶなら、三枝零一は絶対。