雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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『シュルレアリスムとは何か』について

 感激のあまり思わず泣きそうになってしまった。それほどまでに本書は素晴らしい
 本書は著者の巖谷國士が、ある小説の専門学校(と思われる)で行った三回に渡る講演を文章に直したものである。それぞれ第一回は「シュルレアリスム」に関して、第二回は「メルヘン」に関して、第三回は「ユートピア」に関して語っている。いずれの話もいかにも講演らしく、大学の、例えば外国文化とでも題された授業で聞けそうな内容のようだった。秋山が特に感激したのは、第一回の「シュルレアリスムとは何か」の部分。この回では、まずシュルレアリスムに対して一般的に抱かれているイメージが間違っていることから始め、非常に分かりやすい例を交えながら説明されている。またシュルレアリスムの中で、重要な意味合いを帯びている自動記述・オブジェ・コラージュ・デペイズマンといったキーワードを軸に説明が展開されるので、それがまたとても分かりやすい。つまり、まずシュルレアリスムという概念を説明している本として、本書は非常に秀逸なのだ。
 しかし本当に素晴らしいのは、自動記述に関するくだりである。自動記述自体の説明も含むので、少し引用したいと思う。

「自動記述」というと、オートマティック(自動的)という言葉から、人間がオートメーション機械みたいになることを想像したりしますけれど、そもそも記述=エクリチュールという言葉が重要なんで、これはまず「書くこと」を根本的に問う体験ですね。物を書くとは何かという一九一九年の問いかけにはじまる一か八かの実験です。
(37ページより、太字引用者)

 この部分も文面に電撃が走っているんじゃないかっていうぐらい強烈なのだが、この実験を具体的に説明している部分も文学に対する熱い魂が迸っていて凄まじい。今まではどうしてシュルレアリスム運動に色々な人が集まったのか実感が沸いていなかったのだが、こんなにも文学的に対し狂信的で、文字通り命を賭けた実験をやっていたのであれば、それは惚れこむ人がいるのも無理はない。と言うか、秋山もこの時代この場所にいたかった!! と熱望する。
 前述の通り、いわゆる外国文化と授業を受けているような気分になるので、シュルレアリスムに限らず、広くヨーロッパの文化を知りたい人に勧めたいと思う。勿論、文学や小説を書くことについて深く考えている人には言うまでもない。必読! である。