雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1159『スコープ少年の不思議な旅』

スコープ少年の不思議な旅

スコープ少年の不思議な旅

 現存する最も小さくて精緻な創作物は、豆本であると信じて疑っていなかったが、まさかこんな芸術作品があったなんて……!
 本書は桑原弘明が手がけた「スコープ」と呼ばれる作品群を、敬愛する巖谷國士が紹介している本である。スコープ、秋山は本書で初めてその存在を知ったが、スコープとは覗き見るためのレンズがひとつに、懐中電灯の明かりを取り入れるためのレンズが複数ついている掌サイズの箱のことである。明かりを取り入れずに箱を覗き込んだとき、中は真っ暗でなにも見ることができない。しかし、一度、明かりを入れると箱の中は窓がひとつ小さな部屋であることが分かる。窓の外には庭が見え、室内には椅子と物を書くための机がある。しかし、もう一方のレンズから明かりを入れたとき、様相は一変する。窓の外に見えていた庭が見えなくなり、机の上にあった蝋燭に火が灯るのだ。そう、スコープとは光を取り入れるレンズ、また光の強さによって見える世界が千変万化する不可思議なる装置なのである。
 これは是非とも一度、実物を見てみたい。桑原弘明展で検索してみたところ、何度か展覧会が開かれているようなので、待っていればまた開かれるかもしれない。