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1165『イッツ・オンリー・トーク』

イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)

イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)

 第96回文學界新人賞。「第七障害」を併録。
 主人公は誰にでも体を許してしまう。それは男が好きだからでも、性欲を持て余しているからでも、飢えているからでもなく、お互いの距離を計るような堅苦しいコミュニケーションをするぐらいであれば、いっそ寝てしまった方が自然だし、楽だからだ。
 なんて適度な距離感なのだろうかと思った。主人公とその男友達の距離が、ではない。作者と読者の距離が、である。奇妙な話だが、読んでいながら、著者の絲山秋子とセックスしているような感覚に襲われた。それも、とてもスローな。極限まで引き伸ばされ、もうお互い何もしていないと表現できるほどに均されたセックスだ。終わってほしくないなと思っていたが、割り合い、あっさり終わってしまった。果たして先に達してしまったのは相手だったのか、自分だったのかよく分からない、けれど別に分からなくてもいいような。
「第七障害」も好ましい作品だった。