『人類は衰退しました 2』が激烈に面白かったことを、第一に挙げたいと思います。後日、レポートを書きたいと思いますが、これはAtoZ読書会1月例会の課題図書で、発売日にamazonで注文し、買っていたのですが長らく手に取ることをしませんでした。つい積んでしまった理由としては、1巻があまり面白いとは感じなかったからです。文体や筆致は躍動的で、散りばめられていた小ネタの数々には笑わせてもらいましたが、地球の支配者が人類から妖精さんに取って代わった架空の地球において繰り広げられる小さな冒険それ自体は、それほどでもなかったです。とは言え、リーダビリティは「さすが田中ロミオ」と叫ばんばかりに高かったですし、気軽に楽しむ分には申し分ないと感じていたので、いつかは読んでいた……と思います。が、結果的に2巻を早い段階で読むことが出来て、課題図書で推してくれた方々には感謝の念を抱きます。改めて振り返ったところ、技巧的に優れているのは「妖精さんたちの、じかんかつようじゅつ」かもしれませんが、個人的な好みで言えば「人間さんの、じゃくにくきょうしょく」に軍配が挙がります。事前に田中ロミオ版『不思議の国のアリス』という評を聞いていたので、妖精さんたちと同じサイズになって、彼らの生活を実感するような話なのかと思っていたら、そういうわけではなく、どちらかと言うと田中ロミオ版『アルジャーノンに花束を』*1といった趣きを感じました。と言うのも、なんとなくの印象ではありますが『人類は衰退しました』の世界観において、衰退してしまった人類は、ゆとりが極限までそのゆとりっぷりを追求してしまい、ニートだけになった世界に思えるのです。で、物語の後半になるにつれ、どんどん頭身が落ちてゆく主人公は、人間として駄目になってゆくように読めました。これにとてつもない共感を覚えてしまったと言うか、自堕落なものを持っている秋山にとっては、痛切に胸に響きました。似たような衝撃は角田光代の『エコノミカル・パレス』や絲山秋子の『ニート』を読んだときにも覚えたことがあるのですが、本書においては、駄目になってゆく過程が、心身の両方において描かれているので、より身近に感じてしまったように思います。最終的な結論、物語の落とし方には首を傾げないでもないですが、しかし、128ページからの怒涛の展開には、左胸にきりきりと締め付けられるような痛みが走るほどに心を揺さぶられたので、もうあそこだけで満足です。非常に面白かったです。
- 作者: 田中ロミオ,山崎透
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/12/19
- メディア: 文庫
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*1:ネタバレ反転。