雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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素敵なインストのすゝめ

 インストール、ではなくインストラクチャ。略してインスト
 ボードゲームを遊ぶときは、誰かひとりがゲームの未体験者に、ゲームのルールを説明することをインストと呼びます。このインストというのは、ひとによっては極めて難しく、上手にインスト出来なかったが故に「楽しい時間を過ごすことが出来なかった〜」という声を聞くこともあります。
 今日は、そんなインストについて、ちょっと考えてみたいと思います。

インストが難しい理由

 そもそも、誰かに何かを教えること、伝えることは、訓練をしていないひとにとっては難しいものです。
 ゲームのルールに限らず、一定量、インプットすれば、どんなことでも理解することはできます。しかし、自分だけが理解している情報を、他のひとにアウトプットするには、より深いレベルで理解している必要があります。しかも、分かりやすく伝えようと試みるならば、伝える順番や、その方法にも工夫を凝らす必要があります。
 ここらへんの領域に関しては「分かりやすく 話す」や「伝わりやすい 説明」で検索すると、それっぽいのが出てくるので、苦手なひとは一読しておくといいかもしれません。
 このエントリでは、あまり話を広げすぎず、インストに限定しようと思います。

インストの前準備〜ルールブックを読む〜

 ルールを読みながらのインストは至難です。一部、それが可能なひともいらっしゃいますが、そういう方は、このページに来ないでしょうから割愛します。
 インストをする場合は、事前に、きちんとルールブックを熟読して理解しておきましょう。必要に応じて、エラッタが公開されてないか検索したり、ルールの不明点をデザイナに確認してください。

インストの始まり〜バックストーリー〜

 ゲームのバックストーリーについて。これは単純にインストを行う上では、別に必須でもなんでもない、不要な要素です。しかし、素敵なインストを行うことを考えたら、絶対に外すことのできない不可欠な要素です。
 よろしいですか?
 複数のプレイヤが、お互いに顔を向かい合わせて、ボードゲームに興じるという空間は、特別かつ比類なく楽しいものです(ばーん!)。遊んでいる時間は、まさにお祭り騒ぎであり、平凡な日常から切り離されていなくてはなりません(ばばーん!)。では、このスーパーでファンタスティックなアトモスフィアを演出するには、どうしたらいいのか? それが、バックストーリーです(ばばばーん!)。
 ルールブックに書いてあるものの、しばしば無視されがちなストーリーですが、素敵なインストを志す皆さんにおかれましては、情感を込めてご説明ください。

【例】
 皆さんは王子です。女性のプレイヤもいらっしゃいますが、王子を演じて頂きます。皆さんは隣国の姫君に恋しちゃってます。どれくらい恋しているかと言うと、徹夜してラブレターを書いてしまうくらいです。皆さんは、そのラブレターを姫君の手に届けたいと思いますが、残念ながら城に引きこもっている姫君に直接、手渡すことはできません。そこで、皆さんは一計を案じます。協力者に頼んで、このラブレターを姫君の元にまで届けてもらおう、と。それではルールを説明します(後略

インストの順番〜説明内容の整理〜

 ルールの説明を行う上で、絶対に説明を忘れてはいけないことはなんでしょうか?
 シンプルなルールであれば、ルールブックに書かれてある順番に説明すれば問題ないでしょうが、ある程度、難解なゲームになれば、インストだけで15分ほど要することもあります。そういった場合、淡々と説明してしまうとプレイヤの集中力が続きませんし、重要な説明が聞き逃されてしまう可能性もあります。
 どういう順番で説明すれば、よりスムーズに伝わるか? それを事前に考えておきましょう。秋山は、いつも心の中に地図を思い浮かべながら説明しています。スタート地点からゴール地点まで、どれくらい離れていて、どういう経路で辿っていくのかを確認しながら進めます。

【例】
 このゲームは全部で5ラウンドあります。各ラウンドは4フェイズあります。それぞれ配置フェイズ、戦争フェイズ、収入フェイズ、経年フェイズです。この4つのフェイズを計5回、繰り返して、最終的に最も勝利点の高いプレイヤが勝利します。これから各フェイズの説明をしますが、その前に、カードの見方と、ドラフトの仕方について説明します(後略

インストのポイント〜ゴールの設定〜(追記)

 Redさんに指摘されたので、説明の順番について、もう少し詳細に語っておきます。
 上記では、さらりと流してしまいましたがゴール地点を説明するのは非常に重要です。何故ならプレイヤは、頭の中でゲーム全体の起承転結を想像しながらインストを受けるからです。
 ゲームを遊ぶ理由、あるいは目的と換言してもいいかもしれません。どこに向かって突き進めばいいのか? そのゴールを最初示すだけで、プレイヤはゲームの全体構造を想像しやすくなりますし、インストそれ自体も筋の通ったしっかりとしたものになるでしょう。

【例】
 ゲームの目的は、勝利点を稼ぐことになります。すべてのタイルが使用されたとき、最も勝利点を持っていたプレイヤが勝利します。初めてプレイする方は、とりあえず50点以上、獲得できることを目指すといいかもしれません。勝利点の獲得方法は、4種類あります。街道ポイント、都市ポイント、教会ポイント、そして草原ポイントです。まず、最も分かりやすい街道から説明します(後略

休憩〜マナーその他について〜

 喋るのが苦手な方、インストをしていると、いきなり呼吸の仕方を忘れてしまったり、ドモってしまうかもしれません。しかし! 落ち着いてください。緊張する必要は、まったくありません。ボードゲームを遊びに来たひとは、ただ、遊びに来ているだけなのです。失敗したり、上手くインストできなかったとしても、あなたは責められません。
 後、出掛ける前の歯磨きは忘れないようにしましょう。忘れた場合は、コンビニでフリスクミンティア等を買いましょう。コンビニに寄るなら、ペットボトルのお茶を買っておくのもいいでしょう。ずっと説明を続けていると、喉がかれてくるので。

丁寧なインスト〜より充実したゲームを遊ぶために〜

 説明事項の多いインストは、しばしば面倒で煩雑です。ときに割愛したい気分になりますし、サマリーシートを配って「後は見ておいてください」で済ませてしまいたくなります。秋山もそうでした。
 しかし、かびぼうずさんによる『アグリコラ』のインストを受けてから、その認識が変わりました。
アグリコラ』は熱狂的ファンの多いゲームですが、ときに1回のプレイ時間が3時間ほどとなるヘビーゲームです*1。ゲーム全体の流れは、比較的、シンプルなので、ボードやカードの見方と、手番にできることだけの説明なら、そう時間は、掛からないでしょう。ですが、このゲームの真髄は、136種類の小進歩カードと166種類の職業カードの組み合わせによる妙でしょう。かびぼうずさんは、素晴らしいことに、この300種類近い各カードの説明と、それぞれのカードが絶対的にどれくらい強いかと、他のカードと組み合わせると、どのような効果を生みだすのかを丁寧に説明してくださったのです!
 インスト時間は大幅に伸び、よく訓練された農夫の方々は、若干、暇そうでしたが、丁寧なインストを受けることが出来たため、個人的には、非常に楽しく、充実したゲームを楽しむことができました。
 まとめ。割愛したくなるときもあると思いますが、思い切って時間を掛けて説明しきってしまう方が、いい結果を生みだすことがあるでしょう。

おわりに

 と言うわけで、素敵なインストについてでした。
 最後に少し前でTLで流行ったボドゲのミサワの中で、いちばん面白かったネタを紹介させてください。ミサワらしく、いい具合にイラッとしますけれど、その気持ち……分からなくもない! というアンビバレンツ。

*1:「えっ? よく訓練された農夫なら、もっとさっくり終わるよ?」という意見は無視させて頂きます。