いろいろ考えたのですが、結局、シンプルなタイトルに落ち着きました。
と言うわけで、先日、封切りされた細田守監督の『未来のミライ』、早速、見てきた秋山です、こんにちは。
ちなみに前作『バケモノの子』はタイミングを逸して観ていません。『時をかける少女』は好きで、『サマーウォーズ』は嫌いではない、『おおかみこどもの雨と雪』は釈然としない。そんな感じで感想です。ネタバレありです。
期待値が低ければ、何ということはない
まあ、これに尽きるでしょう。
夏の青空を背景に、少年の手を掴む、少女という構図が最高に格好良く、これは時かけを越えるのでは!? そう、思いもしましたが、まあ、あまり期待値を高く設定しても仕方がないと考え直し、わりとテンション低めで臨み、まあ……まあ、という感じでしょうか。
福山雅治が、良かったです。
こんな未来のミライが観たかった
と言うわけで、ここから先は感想でもなんでもなく、こんな『未来のミライ』が観たかったという妄想です。
テーマは、くんちゃんの成長と兄妹愛。ここは崩れてはいけないでしょう。
妹が生まれる瞬間まで、両親の愛情を一身に受けていたくんちゃんが、妹の突然の登場によってその不動の一番という立ち位置を失い、かつて王子であったゆっこにも同情される始末。ここらへんまでは申し分ありません。
さて、未来のミライの登場ですが、彼女には是非、くんちゃんがこのままミライに嫉妬を抱きつづけ、それを解消することのできなかった未来から来ていただきたいですね。つまり、物心ついたころには、すでにして兄とは不仲になっており、そのまま仲良くなれなかったミライです。
ミライ的には、両親は自分を愛してくれるのに、兄が自分を愛してくれないのはさっぱり理解できず、あるいは不条理な怒りを覚えているかもしれません。そんな兄との関係性を改善し、何とかするために過去にやってきた。それが彼女の行動理由です。
とは言え「お兄ちゃん、私と仲良くしてよ!」みたいなことを、4歳のくんちゃんに言っても詮無きわけで、ここは、むしろ姉的存在として振る舞うべきでしょう。つまり、異世界から現れた謎の美少女としてくんちゃんの前に君臨し、彼の関心を惹くわけです。
くんちゃん的には、未来のミライは女神のような存在でしょう。母に代わり、自分を愛し、ハチゲームと称して自分を突いてくれる存在にして、多様な想いを抱くことでしょう。妹でありながら母であり姉的存在。批評家の方々の考察が捗ること間違いありません。
さて、そんなこんなで、何度も過去へと干渉してきた未来のミライ。当然、許されることではありません。SF的に言うと過去改ざん、タイムパトロールの制裁がくだされて然るべきでしょう。その罰は、たとえば過去に遡って、ミライが生まれてこなかったという修正、つまり存在の消滅かもしれません。
ここで立ち上がるのがくんちゃんです。このまま手をこまねいていたらミライは、消えていなくなります。自分は再び両親の愛を取り戻しますが、自分は姉的存在を失いますし、両親は二人目の子どもを失い、悲嘆に暮れることでしょう(あるいは、そんな子が存在したという記憶含めてなかったことにされるかもしれませんが)。そんな未来あってはならない、そんなわけでいなくなってしまった未来のミライを求めて、中庭の大木から旅に出ます、ゆっこと共に。
再び、そんなこんなで冒険を繰り広げたくんちゃんは、しかしミライを救い出すことはできず、やってきたタイムパトロールに撃たれてしまいます。銃から放たれた電流が、くんちゃんを打ち、その存在が世界から消滅してしまう寸前、ゆっこが体当りしてきて、くんちゃんは守られます。しかし、その拍子の時空の亀裂に落ちてしまいます。時空の亀裂を落ちていく中、くんちゃんの中の「未来のミライには戻ってきてほしいけれど、ミライちゃんは嫌い」というアンビバレンツな感情がほどけ「未来のミライも、ミライちゃんも。同じミライという存在。両親の子どもで、ぼくの妹なんだ! ぼくが救わなければならないんだ!」という兄的責任感に芽生え、こう叫びます「ミライ! きみに出会いたい!!」と。
瞬間、背景は夏の青空に切り替わり、上空から「おにーーーちゃーーーーーん!!」降ってきた未来のミライが、落ちるくんちゃんの片手を、がしっとキャッチ! はい、宣伝ポスター及びキャッチフレーズ回収完了です。
この後、未来のミライによって元の時間軸に戻されるくんちゃん。さっき、タイムパトロールの銃に撃たれて消滅したように見えたゆっこも、何故か戻ってきています。これで、何もかもハッピーエンド! と、思いきや、うっすらと消えていく未来のミライ。
「ごめんね、お兄ちゃん。私、お兄ちゃんが私のことを嫌ってる未来から来たから。お兄ちゃんが、私のこと認めてくれたの、すっごい嬉しいけれど、でも、お兄ちゃんに認められた、この世界のミライの未来は、私じゃないの」
なんてこったーい! ですよ。
そう、そう言えば、最序盤で未来のミライの行動理由は明かされていました。お兄ちゃんに愛されたかった。でも、お兄ちゃんに愛されてしまったら、もう愛されなかった世界のミライは消えるしかないのです。
消えつつある未来のミライに向けて、くんちゃんは言います。
「また会えるかな?」
これに対し、未来のミライは、涙を流しつつも、お別れが泣き顔だったら切ないよねと言わんばかりに笑みを浮かべながら応えます。
「未来で待ってる」
時かけじゃねーか
お後がよろしいようで。終わりに
と言うわけで、感想と題しておきながら、何ですかねこれは。すみません、ただの妄想記事でした。
あ、ちなみにキネカ大森で観ました。7月13日にロビーリニューアルということで、オシャレになっていました。
もぎりさんも、ずるいくらいに面白かったです。