雲上四季〜謎ときどきボドゲ〜

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『HUNTER×HUNTER』の何が面白いか真剣に考察してみた

 冨樫義博による漫画『HUNTER×HUNTER』を読みました。
 寝食を忘れる勢いで読んだのですが、これが、もう、激烈に面白くて……そこで『HUNTER×HUNTER』の何が面白いのか、考えてみました。

HUNTER×HUNTER 36 (ジャンプコミックス)

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『HUNTER×HUNTER』との思い出

『HUNTER×HUNTER』の連載が始まった頃、秋山は中学生か高校生くらいでした。毎週月曜日、ジャンプを学校に持ってきている友人がいて、借りて読んでいました。
『ONE PIECE』、『遊☆戯☆王』、『封神演義』、『シャーマンキング』、等々……面白い作品が多かったです。
 しかし、単行本で言うと3巻くらいでしょうか。ハンター試験編が終わったくらいの頃合いで、席替えかなにかで友達からジャンプを借りなくなり、連載を追うのをやめてしまいました。小遣い的な理由もあって、すべての作品を単行本で追うことはできず、『封神演義』以外は自然消滅してしまいました。敢えて言うと『ONE PIECE』と『シャーマンキング』だけは、その後、一気読みしましたが『HUNTER×HUNTER』に関しては、まったく着手していませんでした。

読み始めたキッカケ

 キッカケは、SCRAPが新作のリアル脱出ゲームで、『HUNTER×HUNTER』とのコラボ作を始めると一報があったことです。
 コラボ謎解きは、なるべく原典にあたってから参加したい派として、ついに『HUNTER×HUNTER』を読むときが来たなと感じました。正直、このキッカケがなかったら、『HUNTER×HUNTER』が日本を代表する漫画のひとつであると思ってはいても、実際に着手することはなかったでしょう
 理由はシンプル、主人公であるゴンのキャラクタに今ひとつ魅力を覚えていなかったのです。純朴で、まさしく少年といった造詣のゴンに対して、『幽☆遊☆白書』における浦飯幽助ほどの人間的な奥行きを見いだせておらず、自分のなかの冨樫義博のイメージを崩したくなかったのです。

読み始めてみて

 思い切って全巻を電子書籍で買ってから、しかし読み始めるまで1ヶ月ほど空いたような気がします。
 どれほど食わず嫌いだったのでしょうか。
 いざ、読み始めてみたら、目からウロコがぼろぼろ落ちるのを感じました
 冒頭にも書きましたが、寝食を忘れて読みましたね。
 朝、目が覚めたら、支度を始めないといけない時間まで読み進め、移動中も読み、昼休みなどの時間でも読み、仕事が終わったら読み、夜、ベッドのなかでも寝落ちするまで読み続けました。
 文字通り、夢中になりました。
『HUNTER×HUNTER』は魅力のかたまりでした

何が面白いのか?

 前段が長くなりすぎて申し訳ありません。
 さて『HUNTER×HUNTER』の、いったい何が面白いのか? 何が、そこまでひとを夢中にさせるのか。けっこう真剣に考えたのですが、一言でまとめると、それは物語構造のアップデートです

物語構造のアップデートとは?

 たった今、てきとうに考えた言葉なので、あんまり深い意味はないのですが、意図しているのは、いわゆる起承転結だとか序破急のような物語の構造があるとして、物語の骨格となる、その構造自体が『HUNTER×HUNTER』では、しばしば変化するのです
 これを明確に感じたのはキメラ=アント編、そして直後の会長選挙編です。
 正直、かなり異質だと感じますし、冨樫義博の天才性と飽くなき研究心と探究心がなければ、瓦解していたのではと感じます

骨格の変化

 キメラ=アント編に至るまで、物語の主人公は、基本的にはゴンでした。ゴンが世界の中心にいて、読者はゴンを通じて物語世界に触れていました
 ヨークシン編だけは、ちょっと例外とも言えるのですが、これを除けば、ゴンが新たな世界に飛び込み、そこに強敵が現れ、修行を経てぜったいに倒せないと思われていた強敵を倒す。これが『HUNTER×HUNTER』の基本でした。
 しかし、キメラ=アント編に入ってから、この構造が崩れます。それまでは、単なる悪であったり、人間味があってもあまり掘り下げられていなかった敵側が、がっつりと描かれるようになります。さらに、ボスの周辺のキャラや、ゴンの周辺にいる他ハンターも、深く掘り下げられていきます。その勢いたるや、主人公であったはずのゴンを、むしろ脇役に据えるくらいです。
 シンプルに言うと、一対一だった物語が、多対多の物語になった、でしょうか。

構造の変化がもたらす弊害

 物語の作り手として、この構造の変化は、けっこうな挑戦だったのではないでしょうか。
 だって、ゴンやキルアの成長を楽しみに『HUNTER×HUNTER』を追っていた読者は、間違いなく面食らったはずです。いきなりゴンたちが主戦場から飛ばされ、何週間にもわたって王の成長を読まされたりするわけですから。果たして読者が、どこまで付いてきてくれるか未知数です。
 それに、作り手の力量問題もあります。それまでとは異なる構造で物語を作るとなると、バランス配分も慣れてないものになりますし、展開にも気を遣う必要があります。ゴンの扱いや結末含め『HUNTER×HUNTER』のなかでキメラ=アント編だけ駄作、みたいな感じにもなりかねません
 しかし、どういうことなんでしょうね。
 賛否両論あるような気がしますが、少なくとも秋山は、キメラ=アント編は諸手を挙げて絶賛です。

会長選挙編でさらに変化する

 続いての会長選挙編は、さらに驚きました。
 キルアのバトルシーンが挿入されましたが、これは完全なるオマケで、実質的には陰謀と策略が渦巻く選挙戦がメインです。
 ジャンプ史上、バトルアクションが主軸であった物語のなかで、こんなにも長期にわたって舌戦だけが繰り広げられつづけたことってありましたでしょうか?
 そして、会長選挙編に続く暗黒大陸編では、クラピカが主役となり、念能力によるバトルと陰謀と策略が渦巻く王位継承争いの二本柱で、さらに進化しています。
 いやはや、ほんとうに底知れません。

冨樫義博の天才性と研究心

 途中にも書きましたが、こんなにころころ物語の構造が変わったら、ふつうだったら破綻すると思うんですよね
 伏線が伏線のていをなしていなかったり、作中内で矛盾が発生したり。ふつうは、一度、構造を決めたら、その構造を遵守しますし、あんまり異質なものはいれません。たとえばグリードアイランド編なんて、無理して『HUNTER×HUNTER』に組み込まなくてもいいわけじゃないですか。
 時期的に『ソードアート・オンライン』や異世界転生物の流行った頃合いでしょうか。そういったものを組み込んで、自分のものにしてしまう、冨樫義博にはそういう貪欲な天才性を感じます
 そして、研究心ですよね。作中世界は念能力というファンタジー要素を含みますが、その一方で飛行機や携帯端末、インターネットがあったりして現代的な要素も含みます。それらが無理なく同居できるように、文明社会の設定構築には、そうとう考え抜かれています。ファンタジー世界だからの一言で済ませず、資料をあたり、勉強して、ちゃんと作っている。土台がしっかりしているからこそ、多少、物語で無理をしても、揺るがないのでしょう

終わりに

 思いつくままに書き綴ってしまいましたが、いずれ書き足すかもしれません。
 しかし、タイミングとして非常に良いときに読めたかもしれません。これから先、この物語がどれだけ続くかは分かりませんが、明らかに会長選挙編までが第一部と言えるでしょう。暗黒大陸編がどれだけ長くなるかは分かりませんが、もう何冊か出るのを待ってから追い掛けたいと思います。