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ジャンプ漫画の系譜に列なる計算された作品『呪術廻戦』の感想(ネタバレあり)

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 芥見下々による漫画『呪術廻戦』を1巻から10巻まで読みました。
 以下、感想を書きます。

幽遊白書とBLEACHの流れを組むジャンプ漫画の最新形

 読み始めは感じませんでしたが2巻か3巻くらいから、『幽遊白書』と『BLEACH』の流れを汲む作品だなと感じました。
 平たく言うとオサレとも形容される『BLEACH』の巻頭ポエムのような語句選択に類似性を感じました。

「『死んで勝つ』と『死んでも勝つ』は 全然違うよ」

 言葉遊びのようでありながら、ダブルミーニングでもある。
 そんな、読者に対して引っかかりを与えるセリフが随所にあるのです。


 また、その一方で、スピード感のあるセリフも見受けられます。

「なんで オマエがここにいる」
「なんでって…ああ そういう意味ね。五条悟は俺が殺した」
「そうか 死ね」

 これは、会話の流れが一段、二段、飛ばされているのが分かります。
 この会話の緩急、あるいはテンポが魅力で、ついつい読み込んでしまいます

能力バトル物における画期的な発明

 天与呪縛は、極めて画期的なアイディアだと感じました。
 特異な能力を用いてバトルを繰り広げる作品には傑作が多いですが、その構造的欠陥のひとつに能力の説明があります
 たとえば火を操る能力なんかは、見た目にも分かりやすいですし、その効用や工夫の仕方もイメージしやすいです。
 しかし、突飛な能力であればあるほど理解が難しく、絵だけ見せられても何が起こっているのか分かりません
 その最たる例が、第7部以降の『ジョジョの奇妙な冒険』だと考えています。敵も味方もスタンド能力が不明だったりすると、もう何が起こっているのかさっぱりです。
 かと言って、懇切丁寧に説明されるのも興醒めです
 強者が弱者をいたぶる際に、自身の能力を開示し、自慢したくなる気持ちは分からなくもないですが、奥の手を説明した後に逃げられて、情報が漏洩するリスクは考えないのでしょうか?
 その点、天与呪縛は、敵に自身の能力を説明し、相手に能力を信じさせることで、効果を底上げするという物語的な設定と、能力バトル物の課題が噛み合っています

「もういい。天与呪縛だろ? 術師と同様に情報の開示が、能力の底上げになることは知っている」

 しかも、これが、ほんとうに面白いのは、能力の説明を受けないことが戦術上ありであるということですね。
 対策を練るために相手の能力は知っておきたい、でも知ってしまうと効果が上がってしまうから聞きたくない。面白いジレンマですね。

負で負を祓うマイナスな関係性

 呪術師という在り方も面白いですね。
 通常、この手の作品ですと、主人公側はプラスの能力の持ち主で、それでマイナスと戦うケースが多いです
 しかし、この作品の場合、どちらもマイナスの側と言えます。
 人間の負の感情から生まれた「負のエネルギー」が形を成したものが呪霊。そして、呪術師は自らの「負のエネルギー」を原動力に呪術を使って呪霊を祓う。
 敵として立ちふさがる呪詛師たちは、非術師=一般人を殺したことがあるというだけで、その在り方は呪術師と同一です。
 つまり、右を見ても左を見ても、全員が全員、負のエネルギーを糧としているのです。今までの作品にはなかった構図です。人を呪わば穴二つ、呪術で以って呪術を祓う。タイトルに含まれる「廻戦」という言葉も、なんとなく意味深ですね。

終わりに

 10巻は渋谷事変の幕開けで、このまま読み進めてしまうと最新巻まで追ってしまうことになるので、いったん読む手を休めることにしました。
『HUNTER×HUNTER』が休載していて、『BLEACH』が終わってしまっている今、こういった作品を求めていた読者は多かっただろうなと思います。私も嫌いではないので、これからも楽しみに追っていきます。