藤本タツキ『チェンソーマン』を読みました。
ネタバレありの感想を書きます。
前作『ファイアパンチ』について
藤本タツキの前作『ファイアパンチ』は少年ジャンプ+において連載第1話からリアルタイムで追っていました。
魅力的なスタートから、二転三転する物語に翻弄され、最後の結末はちょっと求めていたものではなく、当時は違和感が残りました。
週刊少年ジャンプ本誌で『チェンソーマン』の連載がはじまったときも、連載中に起こった様々な展開について、Twitterで悲鳴が上がっていたときも、
『ファイアパンチ』のラストがラストだったからなあ……。
と、対岸の火事を見ているような気分でいました。
しかし、冷静になって振り返ると、読んでいる最中自体はハリウッド映画のように面白かったことを思い出し、やっぱり手に取るか……と『チェンソーマン』の1巻に手を伸ばしました。
『チェンソーマン』の感想
激烈に面白かったです。
ふつうに傑作ではないでしょうか?
「そう言えば、藤本タツキの作品だった」
と思い出したのは、姫野が死に、公安対魔特異課が一斉に襲撃を受けたときでした。
早川アキ、姫野、パワー、そしてデンジの4人組が、様々な悪魔たちと戦いつつも関係性を深めていくのだろうなという思いが宿った矢先だったので心が苦しかったです。
しかし、ここでスパッと切り替えることができたのは、やはり『ファイアパンチ』の記憶があったからでしょう。
レゼに対しては勿論、ビームや岸辺にも心を開かず、まずは一周、アクション映画のように、その瞬間瞬間を楽しんで、物語として総括するのは、最終巻まで読み終えてからにしよう。
と距離感を取って読みました。
それでも地獄に落とされたときは辛かったですし、パワーが死んだときは信じたくなくて、思わず本を閉じて「何かの間違いだと思いたい」と首を振りました。
ようやく「助かった」と思ったのは、マキマが説明をはじめたときです。
デンジ君と仲良くなってくれそうな家族も用意した
早川君は良いお兄ちゃんになってくれたし
パワーちゃんは世話の焼ける妹になってくれた
そういう幸せをデンジ君の普通にして
それから全部壊すの
すとーん! と違和感が落ちていって、心から納得できました。
同時に、もう少し前のめりに読んでも平気だったなと安心しました。
正直ずっと姫野の死が引っかかっていたのです。何故、彼女は死ななくてはならなかったのか。多すぎる登場人物を整理するためだったのか、それとも人気が高そうなキャラを敢えて殺すことによって、意外な展開を強調したかったのか。
そうではなかったのですね。
奇しくもデンジ自身が言っていました、
俺は 全っ然 泣けねえんだけど…
ん~ ポチタが死んだときぁ悲しかったな
でも姫野 死んでも… ん~…?
はじめて友達になろうっつってくれた人なのに…
あるいは姫野のデンジに対する布石のひとつと言うより、より本命だった早川アキの心を破壊するため、外堀埋めだったのかもしれませんが、いずれにせよ姫野の死には、ちゃんと物語的な理由があり、必然だったことが分かったとき、ようやく喉の奥に引っかかっていた骨が取れました。
レゼやクァンシ、サンタクロースに関しても同様で、すべてこの結末に至るため、逆算して作られていたのだと思えば納得も納得です。
そう考えて1巻の、デンジとマキマの出会いのシーンを再読してみると、もうこの時点で、マキマはこの結末を予期しているかのような発言のオンパレードで……この調子で読み直せば、どんどん伏線が拾えそうと感じました。
終わりに
想像以上に楽しめたので、今なら『ファイアパンチ』も面白く読めるかもしれない、そう感じました。
連載時はジャンプ+で読んでいたので、単行本を購入することになりますが、その価値はあるかも。そんな予感がします。