雲上四季

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

ある種の3人プレイ専用の推理ゲーム『スカイホープ 最後の飛行』は協力ゲーム好きなら遊ぶべき

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 ゲームと書きましたが小説です。
 いわゆるゲームブックではありません。
 ちょっと新しいタイプの作品で「ほら、あれみたいなやつです」で説明を済ませられないんですよね。逆に言えば、新しいもの好きな方にうってつけです。

内容物とプレイ方法

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『スカイホープ 最後の飛行』は9冊の小冊子で構成されています。
 それぞれ捜査官トーマス編の第1章から第3章、管制官ニコラス編の第1章から第3章、マジシャン見習いベル編の第1章から第3章です。
 プレイヤはそれぞれトーマス、ニコラス、ベル、いずれかのキャラクタを担当し、まず第1章から読んでいきます。
 全員が第1章を読み終えたところで、いよいよゲームスタートです。Webの出題ページを開いて、設問に対して3人で話し合って解答を導き出します。解答が合っていれば第2章に着手することができ、間違っていればさらに第1章を読み込んで推理したり、ヒントを見て考え直したりします。

どんなストーリーなの?

犯罪者を追いかけている捜査官トーマス、妻に逃げられた管制官ニコラス、夢を追うマジシャン見習いベル。ハリウッドに向かう飛行機スカイホープ404便で、ハイジャック事件が起こった。機内で放たれた一発の銃弾が、3人の運命を交わらせる。犯人はなぜ空港の厳しいセキュリティをくぐり抜け、銃を持ち込めたのか? ハイジャックの本当の目的とは? すべての謎を解き明かしたとき、物語に隠された驚くべき仕掛けに出会う──。

http://www.scrapmagazine.com/shuppan/skyhope/

 ああ、分かりました。
 チュンソフトから出ている傑作サウンドノベル『街~運命の交差点~』が近いかもしれません。
 あれは1人用ゲームで、1人のプレイヤが8人のキャラクタをザッピングしながら物語を追っていきますが、この『スカイホープ 最後の飛行』の場合は、ひとりひとりのプレイヤが、それぞれのキャラクタを担当するイメージです。

SEGA THE BEST 街 ~運命の交差点~ 特別篇

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何をするの?

 話し合いです。
 物語は大きく3分割されており、1人のプレイヤが読むことのできる物語は断片化されたものです。たとえば、10時45分、ニコラスはバッグを持ったある男に「腕時計を落としたんです。ヘビ皮の。見ませんでしたか?」と話しかけられますが、彼は捜査対象のターゲット以外には関心を払わないキャラなので「知らん。他を当たれ」とすげないです。
 その10分後、ベルは保安検査場前でヘビ皮の腕時計を拾います。そして、すぐそばにいた「ジョン・レノン」という嘘みたいな名札をつけた警備員に預けます。
 そして、11時10分、ニコラスがジョン・レノンと会話していると、金色の腕輪をした男が「あの、ちょっとすみませんが……それ、私のです」と警備員の持っていた何かを受け取ります。
 分かりますでしょうか。個々の物語においては、なんてことのないワンシーンなのですが、話し合いをして情報を出し合った結果、バラバラだったジグソーパズルが1枚の絵に変化するように、バッグを持って、金色の腕輪をして、ヘビ皮の腕時計を探している男という人物像が浮かび上がってくるわけです。

役割分担と情報共有

 リアル脱出ゲームに参加すると必ず言われる言葉があります。
 それが、役割分担と情報共有です。
 リアル脱出ゲームにおいては、謎の総量が多いので役割分担して効率的に解かないと制限時間に間に合わなくなるよと言うことと、最初の方に使った小謎を、後の方で再利用したりするので情報共有が大事だよということなんですけれど、このゲーム『スカイホープ 最後の飛行』においても、役割分担と情報共有という概念は重要視されています。
 言ってみれば1プレイヤが1キャラクタを担当する構図それ自体が役割分担で、個々の物語を集約しないと推理が進められないところが情報共有です。

秋山は3人プレイを推奨します

 公式サイトには「1人でじっくり楽しむこともできます」とあります。
 確かに1人でも遊べます。でも、その場合の読書体験としては、いわゆるふつうのミステリを読むのと、そう変化がないんですよ。単純に、主人公が3人いて、章ごとに異なる視線で物語が描かれる。そんな、世によくあるミステリを読むのと、同じような読書体験しか得られません。
 でも、3人プレイは違いますよ。事件に関係がない、些細な出来事と思って読み飛ばしていて、他の2人に告げなかった、ほんとうにたいしたことのない一行が、実は事件を根底からひっくり返す、重要なワンシーンだったりするのです。
 話し合いを経て、推理が進み、物語が大きく変化する一瞬を楽しむには3人で遊ぶしかありません。
 いっそゲーム会に行って「3時間の推理ゲームです、一緒に遊びませんか?」と呼びかけてもいいくらいです。

スコア

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 成功率は68%でした。
 途中、何度か間違えたのと、分からなかったらすぐにヒントを見たりしたので、成績は低めです。その代わり、プレイ時間は2時間50分と、公式が出している想定プレイ時間3~4時間よりかは短めでした。
 親和性という観点では、ミステリが好きなひとよりも、リアル謎解きゲームが好きなひと、リアル謎解きゲームが好きなひとよりも協力ゲームが好きなひとに向いている、と感じました。オススメですよ。本に書き込んだりせず、付録のマップもカラーコピーを取れば、一応、繰り返し遊べます。

3人で読む推理小説 スカイホープ最後の飛行

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