涙の落ちる音が聞こえた気がして、死神は振りかえった。鎌は目を赤くしていた。
「どうしたの?」
「いや……もう、これで最後なんだなって」
「そうね」
死神はふふっと笑うと、鎌の手を取った。
「そろそろ、はじめましょう」
「何を言ってるんだ? 終わらせるんだろう」
死神は眉をしかめて、
「……終わらせるためによ」と言った。
それを受けて、鎌も口調を荒くした。
「はじめるためにさ」
引かない鎌に、死神は溜息をつく。
「相変わらず強情ね」
「それは君の方だよ」
ふたりは五秒ほど睨みあってから、同時に破顔した。
「まあ、それはともかく」
「そうだな。まずは」
死神と鎌はしっかりと手を繋いだまま前を見た。
そこには光に溢れる世界が広がっている。
「いいんだよね」
「勿論。……君こそどうなのさ」
「構わないよ。よし」
ふたりは同時に足を踏み出した。
彼女の夢のおわりがはじまった。