雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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DESPAIR

 あすの君が微笑む。
 その横顔が見えそうで見えない。一歩、前へと進み、君の隣に立ちそのまま正面へと回りたい。でも、前へと進もうとするこの両足は、深く絡みついた蔓にその動きを完全に止められてしまっている。アアと気づく。ここには目に見えない壁があるのだと。それは透明で、手で触ってもそこにあると気づけないほどに薄い。けれど、絶対。足止めを食らい、どうしようもできなくなったまま去ってゆく君の後姿を見る。
 否。
 彼女が遠ざかっているのではなく、自分が今いるこの世界から遠くへと行こうとしているのだ。気づけば息はだいぶ浅く、短くなっていた。いつの間にか、掲げ上げていた拳は、だらりと腰の下を漂っており、君を追い続けていたはずの視線は、地面に向けられていた。心が負けてしまっている。他の誰でもない、自分自身が己の敗北を認めてしまっていた。
 否。
 まだ遅くはない。今からでも敗北を否定し、拳を掲げ、再び前へと前進することもできるはず。それは今すぐ、この次の瞬間にも出来るはずなのに、心はそれをしようとしない。アアと呟く。それが最後となった。いつの間にか心も身体も、完全に諦めきってしまっていた。


『絶望』496文字