雲上四季〜謎ときどきボドゲ〜

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

星を継ぐもの

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

 月面で真紅の宇宙服をまとった死体を発見される。調査の結果、驚くべきことにその死体は、五万年前に死亡しているのだった。果たして謎の死体の正体は、月面にその死体があった理由は、その死体は本当に五年前からそこにあるのか。
 傑作である。本書は素晴らしい。――「巨人たちの星」と呼ばれる四部作の一作目で、シリーズの中もっともミステリ色が高く、同時にSFとして傑作。月面にて発見された死体を科学的に分析する場面は、非常にリアルでSF色に富んでいるのだけれど、本書の素晴らしい点はそこではなく(SFファンにとってはそここそが読みどころかもしれないが)、すべての証拠が集まった時点で明かされる死体の正体と、そこから導き出される今日の現代世界の存在性である。あらゆる伏線を回収し、謎のすべてに整合性のある解を与え、これ以上はないという夢のある解釈、そして儚くも哀しい結末。終盤に至るまでSF色が濃いのだが、壮大な物語やミステリが好きな人は諦めずに最後まで読んでもらいたい。ラスト数ページの盛り上がりは、呼吸数を減じさせ、瞬きすらも封印する。