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猫にかまけて

猫にかまけて

 町田康を読んでみようと思い立ったとき、猫好きなら『猫にかまけて』だと断言されたので、その日のうちにamazonを用いて本を取り寄せた。届いた本を早速、紐解いてみると著者が猫と暮らす日常を綴った日記風のエッセイだと分かった。著者あるいはその家人が撮ったのであろう、写真も適度な間隔で挿入されている。
 ちょうど真ん中と終盤、都合、二回も涙ぐんでしまったのだが、読後の感想として、本書はあまり秋山の好むところではない。と言うのも、冷静に考えると、本書で用いられている技巧は、実に安易なものなのだ。序盤部分において、実にくだらない、でも微笑を誘うような日常をダラダラと描いておいて、終わりに近づくにつれ、その日常が実は他の何物にも代えがたい大切なものだったと示すのだ。しかも、終わりが近づくにつれ、それを匂わせるような記述をしつこいくらいに繰り返しているのだ。こんなことをされては、泣かざるをえないではないかと思う。だって、実体験としてペット――この他人行儀な言葉は未だに慣れない――との別れを経験したことのある人が読めば、かつての日常がフラッシュバックしない訳がないのだ。限りなく、反則に近い。ずるかった。