雲上四季〜謎ときどきボドゲ〜

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

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好き好き大好き超愛してる。

好き好き大好き超愛してる。

 かつてあんなにも読みづらくて、文字を追うのが苦痛で苦痛で仕方がなかった舞城王太郎が、まるで浅い海をすいすい泳ぐように読めてしまった。しかも面白かった。とは言え、相変わらず物語はよく分からなかった。愛をテーマにした掌編集的中編なのだろうか。『ベルカ、吠えないのか?』風に表現するならば、「愛よ、愛よ。お前はどこにいる」。冒頭の部分だけ読み返し、もしかしたら本当の主人公は、各掌編の中で描かれているどの主人公でもなく、ただ全ての主人公、全ての登場人物、世界の全ての人たちが幸せに暮らせるように祈っているのではないのかと。過去について祈り、それを物語化しているのではないかと気づいた。だとしたら……素晴らしいね。
 同時収録の「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」は、雑誌掲載時に読んだのだが、舞城の短編作品の中では好きなほうなので再読しようとしたが断念。単純に文字が読みにくすぎる。ファウストと同じく、作品によって印刷用紙や書体を変えているのだが、表題作の「好き好き大好き超愛してる。」が行間を広く取っており読みやすく作られているのに対し、「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」は逆にぎっしり詰め込まれていて、しかも文字がやや掠れていて、ギャップも作用してか読めなかった。編集は猛省すべき。