
- 作者: 村上龍
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1978/12/19
- メディア: 文庫
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読みながら思ったのは、麻薬や性を書いた作品であるのに暴力性が少ないということ。あるいは希薄な現実感と言い換えてもいいかもしれない。腐臭や血生臭さなどが紙面からにおってきてもおかしくないのに、何か違うのだ。淡々と事実だけを描写しているようで、迫るものが感じられなかった。最たるは主人公が口の中に射精されるシーン。秋山だったら絶対に避けたい状況であるがしかし、主人公は抵抗しつつもその状況自体を受け入れてしまうのだ。まるで主人公自身、今まさに口腔に射精されているのが自分のことだとは自覚していないようでさえある。この剥離している感が、文章全体を何となく異質なものに変えている。読了後、解説を読むと上をもう少し具体的にしたものが書かれていて納得。思っていたより面白かったと言える。