
- 作者: 新井千裕
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1993/11
- メディア: 文庫
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村上春樹にファンタジィ色を濃くしたような内容と聞き及んでいたが、まさしくその通り(個人的には樋口有介に近い)。記憶を一日に二日分ずつ忘れていってしまう彼女は二十歳の誕生日に全ての記憶を失ってしまい、それは何と明日である! と裏表紙にあって、てっきり彼女の記憶の喪失を食い止める内容かと思いきや、そういう訳でもなく、進んでいるのかいないのか、よく分からないまま謎めく挿話を交えながらも進む冒険小説だった。「きっと昔の私は、あなたのそういういい加減そうなところが好きだったのかもしれないわね」という科白があるのだが、実際、いい加減とも言える軽妙なタッチが気に入るかどうかだろう。
ちなみに秋山はと言えば、たいへんに気に入った。特に209ページ以降。『ぬ』に全力を注いだであろう浅暮三文を、ここからの数ページは軽く凌駕している。