雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1059『フラッタ・リンツ・ライフ』

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life

 実に残酷だ、あんまりだ。
スカイ・クロラ』『ナ・バ・テア』『ダウン・ツ・ヘヴン』に続くシリーズ四作目。最新の情報では全五作(当初の予定では全三作ではなかったかしら)とのことなので、後一作で終わってしまう。以下反転。
スカイ・クロラ』から『ダウン・ツ・ヘヴン』に至るまで、筆致がどんどん現実的に、具体的になっているように読めた。言うなれば、徐々に夢が覚め、現実に近づいていくような感じだ。だからこそ、秋山はこのシリーズを草薙水素の成長物語、もう少し穿って言えば、ティーチャとの恋愛を経てキルドレでなくなってしまう物語だと思っていた。しかし、本書『フラッタ・リンツ・ライフ』を一読して驚いた。主人公が草薙水素でないのだ。さらに、草薙水素は自分がキルドレでなくなったと作中で言っている。草薙水素の代わりに主人公に抜擢されたのは、クリタと呼ばれる男性らしいキルドレだ。邪推してみれば、草薙水素キルドレでなくなってしまったから主人公から降格されてしまった。そして主人公ではなくなってしまったから、ティーチャとの対戦の機会が与えられなくなった。キャラクタ小説を読むときのような稚拙な読み方ではあるが、ああ、森博嗣は厳しいなあ、と思った。草薙水素かわいそう。