雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1058『あいにくの雨で』

あいにくの雨で (講談社文庫)

あいにくの雨で (講談社文庫)

 全編に雨が降っているわけでもないので、しっとりとでも表現すればいいのか、全体的に落ち着いた穏やかな、でも少し耳につくような雰囲気が漂っている。そのせいか、結末は麻耶雄嵩にしては地味としか言えないようなものに見えても、そう違和感は覚えなかった。そんなことを考えながら、千街晶之の解説を読んだら、秋山の中のもやもやとした不明瞭な感情がすべて言葉で指摘されていて少し感動した。そう、そうなのだ。千街晶之の解説があれば、本書に対する感想など不要だろう。
 それはそうと、秋山が思うにこの物語における本当の衝撃というのは、作中の結末で書かれている、その後日なのではないだろうかと思う。つまり「こんなことがあったのに、それでも日々は続く。主人公が受験に成功し、独り暮らしを始めたら犯人も被害者もいない空間での生活が始まってしまう」というのが衝撃なのではないだろうか。