
- 作者: 多崎礼,山本ヤマト
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/07
- メディア: 新書
- 購入: 12人 クリック: 130回
- この商品を含むブログ (96件) を見る
千夜一夜物語を下地に作られたファンタジィ。十八諸島と呼ばれる島国のひとつが舞台となっており、二人の語り部が交互に自分の知っている話を語るという形式を取っている。まず、その舞台設定からして魅力的だ。どうして語り部たちは仮面を被り己を秘しているのか、煌夜祭に語り部たちが集まり夜通し話をするのはどうしてなのか、魔物は一体なんなのかどうして存在するのか、そしてこの二人の語り部はどうして他に誰もいない廃墟で煌夜祭を行っているのか――。これら設定が持つ謎が気になって、リーダビリティが非常に高く感じるのだ。
さらに二人の語り部によって語られる七つの物語がまた面白い。特に第四話までは一個の短編として成立している。しかも本当にすごいのは、七つの短編と二人の語り部という一見バラバラに見えていた要素が、実は複雑に絡まったひとつの大きな物語であったと判明した瞬間だ。
実に素晴らしかった。傑作、と断言してしまって問題ないだろう。今年、デビューした新人の中では他を大きく引き離して、光り輝いている。