- 作者: 角田光代,藤野千夜
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/10/14
- メディア: 文庫
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物語そのものよりも著者の姿勢に興味を持った。この作品で描かれているのは「働くのは負けだと思っている二十台が手に職をつけず、バイトだけで生活し三十台の半ばを迎えた人間」そのものである。作中に描かれている登場人物たちがどうであるか、その点に関して著者は何も語っていない。ただ、読者に委ねている。彼らをどう思おうが、それは読者の自由である――という著者の声が聞こえるようでさえある。したがって、主人公たちの無目的さを揶揄する読者もいれば、不甲斐なさに同情する読者もいれば、厭世観に共感する読者もいるだろう。
秋山はと言えば危機感を抱いた。客観的に彼らの生活を見ると、確かに愚かかもしれない。先見性があるようには見えないし、将来設計の「し」の字も知っているようには見えない。しかし、現実に彼らの生活は魅力的だ。明日のことを考えずに生きる方法は楽だ。楽だし、ときには楽しくもさえあるかもしれない。けれど自由ではない。それは致命的だ。反面教師としたい。