雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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1316『ホラー作家の棲む家』

 どんな類のトリックにも偏見はないつもりだけれど、実を言うと「主人公が著者と同じ名前で、この事件は現実に起こったものなのだよ!」というルポルタージュみたいなタイプのメタだけは苦手。どんなにそのトリックが上手く決まっていたとしても、秋山にとって小説の中の出来事というのは、現実とはきれいに一線を画した虚構の世界の物語であるわけで、これを現実世界に融解させようとしている作品はちょっと好きになれない。
 のだが! 本書を読むことによって、秋山のメタに対する今までの認識は、打ち砕かれたように思う。だって、実に面白かったのだ! 確かに、瑕疵は多い。全然、意味があるように見えないメタや、終盤の超展開には、正直なところ目も当てられない。けれど、主人公が怪奇幻想について語るときの活き活きとした口上や、絡みあう伏線や、最後の一行などは、もう最高なのだ。本当、素晴らしかった。
 著者の三津田信三は元々、編集者で今までに怪奇幻想をテーマとした叢書を、いくつか手がけているらしい。今年度はこれらを制覇するという課題を、己に与えてもいいように思う。