雲上四季〜謎ときどきボドゲ〜

本と涙と謎解きと、愛しさと切なさとボードゲームと

2012年第1四半期オススメ10冊

 5年ぶりになりますが、唐突に思いついたのでやってみます。
 2012年1月から3月の3ヶ月間に読んだ小説の内、面白かった10冊を軽く紹介します。尚、読んだのがこの期間というわけで、旧作も含みます。と言うか、最近は、全然、新作が読めておりませぬ。

恒川光太郎『草祭』

草祭 (新潮文庫)

草祭 (新潮文庫)

 美奥という田舎町を舞台とした5編からなる短編集。登場人物も時代も共通しておらず、ただ妖怪や非日常が現実と隣り合わせにある「美奥」という不思議な土地だけが共通している、ふしぎな作品です。語り手が、みな何らかの罪を背負っていて、怪異を通して罰を受けたり、償っていく、ふしぎな救済の小説でした。収録されている作品の中では、奇妙なカードゲームを遊ぶ「天化の宿」が好みです。

米澤穂信儚い羊たちの祝宴

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)

 こちらも短編集です。上流階級のお嬢様を語り手に、俗世から隔絶された、ある種、ふしぎな空間が描き出されています。滅びや復讐といった負の要素が、少女という一見、無垢な概念とうまい具合に絡み合っていて、読んでいるとなんだか背中が震えるような背徳的な悦びがありました。絶妙な少女小説でもあるように思います。

古野まほろ『群衆リドル』

群衆リドル Yの悲劇’93

群衆リドル Yの悲劇’93

 新潮社光文社から刊行された、古野まほろ新シリーズの1冊目。賛否両論のある作者なので、震えながら着手したら、そのペダンティックでキテレツな文体はさておき、存外に真っ当かつ、正統派なクローズドサークルが展開されていて、すっかり気に入りました。見た目はゲテモノだけど、食べてみるとやっぱりゲテモノで、でも悪くない、みたいな?

城平京『虚構推理 鋼人七瀬』

虚構推理 鋼人七瀬 (講談社ノベルス)

虚構推理 鋼人七瀬 (講談社ノベルス)

 都市伝説から生まれた鋼人七瀬なる異形の存在を、論理で絡めとって虚構に返す、アンチアンチミステリ……というのは冗談ですが、まあ、良い幻想ミステリでした。終盤の解決編におけるひとり推理合戦は、存外に論理的で、見た目のアニメっぽさに反して硬派であるように感じました。しかし、続きそうで続かないんだろうなあ……。

日日日『平安残酷物語』

平安残酷物語 (講談社BOX)

平安残酷物語 (講談社BOX)

 災害によって大人が死んだり猿になったりして、少女だけが生き残ったふしぎな遠未来としての平安。もうなんかすっかり狂ってしまっていて、主人公は、走馬灯でも見てるんじゃないの? そんな破滅的な小説で、酩酊しました。だって、36編の掌編からなるんですけれど、死んだかと思いきや、次の編では何事もなかったかのように復活してるんですもの。

石持浅海『君の望む死に方』

君の望む死に方 (祥伝社文庫)

君の望む死に方 (祥伝社文庫)

 死にたい老人と殺したい若者、そして誰が死ぬのも見たくない名探偵による三すくみのクローズドサークル。舞台がセットアップされるまでは冗長でしたが、殺人環境を整えたり、それが巧妙に崩され始めてからは、もう一気読みでしたね。倒叙物の新しいスタイルだとも感じました。後、これ、いわゆる「人が死なないミステリ」としてカウントしてもいいんじゃないかしら。

汀こるもの『パラダイス・クローズド THANATOS』

パラダイス・クローズド THANATOS (講談社文庫)

パラダイス・クローズド THANATOS (講談社文庫)

 汀こるものデビュー作。お前ら、京極夏彦のうんちくが好きなら、これでも聞いとけ! と言わんばかりに繰り出される魚ネタは、申し訳ないと思いつつ読み流してしまいました。でも、この開き直った感じ、嫌いじゃないなあと思っていたら、解決編において驚愕しました。これは凄い作品ですよ。新本格ミステリ始まったね。

西尾維新恋物語

恋物語 (講談社BOX)

恋物語 (講談社BOX)

 ネタバレを受けずに読み始めたので、語り手にはふつうに驚いて、読了した後の宣伝ページを見て、また驚いたり。いやあ、西尾維新は、読者を嬉しい感じに裏切ってくれますねー。あ、内容? 内容は良かったですよ。グッド救済です。

東野圭吾『歪笑小説』

歪笑小説 (集英社文庫)

歪笑小説 (集英社文庫)

 出版業界を取り扱ったブラックユーモアな短編集。東野圭吾効果で、バカ売れしたみたいですが、本来は、そんなに売れる小説じゃないですよね。どちらかと言うと、山椒は小粒でもぴりりと辛い系の作品で、好きなひとは好き、みたいな感じだと思います。秋山は、ええ、好きな方です。本書を読了後『黒笑小説』も読みましたけれど、面白かったですね。

川上稔境界線上のホライゾン 4 下』

 10冊目は、迷いましたけれど、川上稔大好きっ子なので、これを。3巻のラストが、けっこう衝撃的で、そこからどう立ち直るのかなと思っていたら、4巻は3冊かけて再起が描かれていて、良かったです。こう、挫折からの立ち直りって大変ですけれど、立ち直ると今までよりもずっと遠くが見えるようになるんですよね。そして、それまでは吹けば飛んでしまっていたのが、抵抗できるようになる。良い成長物語でした。

おわりに

 と言うわけで、10冊でした。
 次のクォーターも面白い本に出会えますように。そして皆様も、どうぞ、良い四季を。