ごいた、ご存知ですか?
石川県は能登地方にて古くから遊ばれている伝統ゲーム、その名も『ごいた』です。
さらっと背景をご説明
ごいたは4人専用のゲームです。
計32枚の駒を、1人8枚ずつ持ち、持っている駒をすべて出し終えると勝利です。プレイヤは2人対2人で戦い、向かい合わせに座ったプレイヤが、自分のパートナー、相方になります。どちらか片方が勝利すれば、それはチームの勝利になるので、自分が上がっていいですし、相手が上がってもいいです。
ごいたで使う駒は、竹製です。木製の駒ですと、どうしても木目やシミで、駒が裏側から見分けがついてしまい、裏から見ても何の駒であるか分からないという観点から竹が選ばれているらしいです。
ちなみにゲーム自体はカード版で遊べます。
竹駒の入手方法
現在、ごいたの竹駒は、能登町宇出津のごいた駒職人である志幸幸三さんがせっせと作られておられます。
ねこまどShopという通販サイトに卸されており、ときおり販売されますが、1万円を越える価格でありながら、その希少性から瞬殺されます。
秋山もいずれ入手したいと常日頃、思ってはいますが、未だその機会に恵まれていません。
技術の継承と発展
いずれ公式から正式に発表があるでしょうが、能登ごいた保存会の東京支部では、竹駒の供給状況を憂慮し、なんとかこの技術を継承すると同時に、もう少し容易かつ安価に竹駒を提供するシステムを構築できないか模索しています。
と言うわけで、竹駒プロジェクトという名称で、まずは竹駒作りを体験してみようというイベントが企画されました。このイベントは、東京支部の支部員限定で企画され、何を隠そう支部員である秋山は嬉々として参加してきたのであります。
このイベントについては、気になっている方も多いでしょうから、かんたんにレポートしたいと思います。
ごいたにうってつけの竹の種類
まずは、竹という素材のレクチャーから。
晒竹や青竹という種類、夏や冬、季節によって状況が異なること。それぞれの価格帯や購入方法など。
能登ごいた保存会の他の支部では「裏山から竹を刈ってきた」なんて猛者もいますが、残念ながら東京支部のメンバーに竹山の所有者はいなかったので、まずは竹材店との交渉から始まる感じです。
この日は、竹材店から端材として貰ってきたものを使って、駒作りの練習をしようということになりました。
治具の作成
まずは、作業台としての治具(じぐ)の作成から。
ごちゃごちゃして分かりにくいですが、この治具の上で切ったり磨いたり、厚みや長さを調整することを想定しています。当たり前ですが、竹は円筒の形をしているので、それを駒の形にするまでの間に、様々な工程があります。
竹駒を作りたいひとなんて、世の中にほとんどいないので、そのための作業台なんて売ってはおらず、それを作るところからスタートしなければならないわけですね。
竹磨き
治具作成班と竹割り班の2班に分かれることになりましたが、秋山は竹にさわりたかったので、竹割りに向かいました。
まずは、竹をきれいにするところからスタートです。
こちらは、ヒートガンという超強力なヘアドライヤーみたいなもので竹の内部にある油を浮かび上がらせて、同時に汚れを取るところです。黒ずんでいた竹が、一瞬で青々とよみがえる様子が見て取れるかと思います。
竹割り
続いて竹割りです。
利き腕とは反対の手でナタを押しつけ、利き腕で木槌を持ち、上からポンッとやるとカーン! と割れます。
見る限り、けっこう気持ちよく割れていますが、けっこうコツが求められ、最初のうちは木槌で叩いた瞬間にナタが傾いてしまい、竹が吹っ飛んでいったり、ぜんぜん割れなかったり、真ん中まで食い込んで、そこで止まってしまったり試行錯誤でした。
磨き
続いては磨きです。
こちらはヒートガンを使わずに、汚れを小刀で下ろすテストです。初期状態で竹は、これくらい汚れていました。
この汚れを小刀でもって、がりがり削っていきます。
小刀は斜めに掛けるというより、竹に対して垂直にかまえて、そのまま滑らせるだけでけっこう汚れは落ちます。しかし、それだけでは青色の部分までしか磨けず、青色に統一しようとしても、部分的に茶色が見えてしまうので、結局、統一感を出すためにすべて茶色になるまで刃を入れざるを得ないのですよね。
さらに紙やすりを掛けると、ここまで綺麗になります。
写真では、やや見づらいですが、人差し指のあたりと、先端に汚れがあるのが分かりますでしょうか。この汚れは竹の内部にまで浸透してしまっており、いくら削っても取れるものではありませんでした。
初期状態では、こういう汚れがあるかどうかはまったく分からず、ここまできれいに磨いてようやく分かるものなので、これだけがんばったのに使い物になる箇所が限られていることが分かると、けっこうショックです。
磨きに磨いた竹を横から見ると、こんな感じです。どうです、だいぶ駒っぽくないですか?
裁断、文字入れ、待ち
磨きを終え、棒状の竹ができたら、両面テープを使い、このように型を張っていきます。
そして、この型に沿うようにノコギリで角を切り落とし、断面にやすりをかけて触り心地よく、なめらかになるようにしていきます。
形を整えたら、いよいよ文字入れです。駒の内側にも先ほどと同じように型紙を両面テープを張って、黒い部分を潰すように彫刻刀を入れていきます。
すべての黒字を潰したら型紙と両面テープを剥がし、お手本を手元に起きながらデザインナイフで文字を整えていきます。
文字入れが終わったら、次は油に入れます。写真は、みのるさんが用意してくださったサラダ油です。だいたい待ち時間は30分くらいでしょうか。油の種類によって、どれくらい入れるかは時間を変えた方が良いみたいです。
30分たったらピンセットで油から取り出してティッシュで拭ってから、新聞紙の上で乾かします。このフェイズが、けっこう長くて、だいたい半日ほどおきます。さすがに半日はまってられないので、この日の作業はここまでとなりました。
その後
工程として残すは、朱入れだけとなります。次の開催日に朱を入れたり、オリジナルの香が出来上がることになります。楽しみですね。
さて。
全体の感想として。
想像していた以上に難しいですね。竹は、けっこう強度があるので、均一の形にすること、そして文字を彫り入れるのが非常に難解でした。正直、ひとつだけなら、まあ行けます。多少、不格好でもずっと付き合うことになるので愛着を覚えます。
しかし、自分の作った駒で実際にごいたを遊ぼうと考えると軽く絶望を覚えます。何故なら、少なくとも裏側からは見分けがつかない、均一に作られた駒を32個も用意しなければならないからです。並の精神力では、とうて持ちません。今まで多くの方が、竹駒作りに挑み、挫折していったという話を聞いて納得です。
この竹駒プロジェクトが、今後、どのように進んでいくのか秋山には分かりませんが、相当のごいた愛がなければ32個を作り切ることはできないように感じました。
ごいた愛について
と、脅しておいてなんですが、意外にあったみたいです、ごいた愛。
まずは道具を揃えました(ポチリ済み)。
ナタと木槌は、まだ買っていませんが、まあ、さすがに後回しで良いかな、と。
後、ぺこらさんにお願いして、近くの竹材店に行っていただき、色々とお教えいただいたり、まあ、長くなってきたのでここらへんは次回ということにしましょう。
終わりに
ざっと書きましたが、少しでも多くの方が興味を持って、竹駒作りに励んでもらえれば、モチベーションが持続しそうな気がします。
竹駒作りに興味はないけれど、応援はするよという方も、よろしくお願いします。