ウヴェ・ローゼンベルクによる交渉ゲーム『ボーナンザ』のソロプレイにも対応した2人用独立型拡張『アル カボネ』の感想です。
タイトルはアメリカ禁酒法時代に暗黒街シカゴの帝王として君臨したギャングアル・カポネに由来する、と思われます。
2人用の『ボーナンザ』と言えば、少し前に紹介した『ボーナンザデュエル』があります。
あちらはブラフの要素を加え、新しい交渉システムを打ち出しましたが、こちらは、また違った感覚のゲームでした。
まず、ソロプレイが可能です。その場合は、自動で豆を植えたり売却したりするギャングと戦うことになります。ゲーム終了時、3人のギャングが獲得したより多くのターラーを獲得することができればプレイヤの勝利、獲得できなければ敗北です。
2人プレイの場合、基本的には対決することになります。
いわゆる『ボーナンザ』における交渉の要素はありません。
お互いにより多くのターラーを獲得すべく奮闘しますが、第3陣営として2人のギャングが場に出ており、ソロプレイのときと同じように自動的に豆を植えたり売却したりしていきます。悠長にプレイを進めていると、ギャングがどんどんターラーをガメていくことになるので、プレイヤは互いに少しだけ歩み寄って共闘する必要があります。
いえ、共闘という表現は、正鵠を射ていません。
前述した通り、このゲームに共闘の要素はなく、一方のプレイヤが、もう一方のプレイヤにカードを渡すことはできないので。
しかし、捨て札を介し、間接的にカードを渡したり、あるいは互いに競合しないよう譲歩することはできます。
譲歩。
そう、この思いやり、にも似た曖昧な距離感が、とても良く機能していると感じました。
完全に敵対し、互いにいがみあっていると、両プレイヤともいともたやすくギャングに撃ち取られることでしょう。それを避けるためには、利益を与えないまでも、不利益を与えるのもはばかる、くらいがちょうどいいあんばいなのです。
ストレートに言って面白かったです。
『ボーナンザ』特有の、カード編成やレートを知っていて、適切な交渉ができないと共倒れになる、ということもなく、過剰な意地悪はやめようね、くらいのプレイが、結果的に功を奏することになるというさじ加減が絶妙だと感じました。
どちらかと言うと『ボーナンザ』が苦手なひとにこそ勧めたい、そして『ボーナンザ』の交渉に面白さを見いだせない方にこそ勧めたいゲームでした。
2人用ゲームのなかでも、かなり好きな部類です。1回のプレイ時間は30分とちょうどいい感じですし、機会があれば購入して、手元に置いておきたいと感じました。