雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

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演劇『メモリー×メモリー』の感想(ネタバレあり)

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 12月9日から13日にかけて開催された、シベリア少女鉄道の『メモリー×メモリー』を観劇しました。と言っても劇場でリアルに見たわけではなく、映像配信です。
 非常に面白かったので感想を書きますが、ネタバレありとなります。

見ようと思ったきっかけ

 きっかけは、こちらの発言です。


 通の謎解き好きならば知っている、他ならぬ池上さんのお墨付きです。
 しかも、シベリア少女鉄道と言えば、脚本演出を担当している『エクストラショットノンホイップキャラメルプディングマキアート』と『ガールズビジネスサテライト』を見たばかりでしたし、『メモリー×メモリー』には私立恵比寿中学の中山莉子が出演しているということで、自分のなかでは旬とも言える状態でした。

あらすじ……?

人は誰しもいくつかの、
忘れられない思い出を抱えてる。

あのときの苦い記憶がある。

だから嬉しいことがあったときでも、
どこか悲しい顔で笑うの。

あのときのまばゆい記憶がある。

だから悲しいことがあったときでも、
前を向いて涙を拭うの。

悲しいとき。夕陽が沈んだとき。
どうもありがとうございました。

http://www.siberia.jp/stage/

 見終えた後なら言えちゃいますけれど、この、あらすじ(?)詐欺みたいなものですよね
 だって、ぜんぜん面白そうじゃありません。
 でも、見終えた後なら、なんですかね「くすり」と笑ってしまう諧謔があります。
 なんだこれー!

前半の感想

 前半は、やや冗長のきらいが否めません
 田舎町で起こったらしい殺人事件、引退した陸上選手、イジメで友を失った少女。皆、一様に過去になにかを抱えており、それらを思い出したり、忘れようとしていたりします。
 登場人物同士も、お互いに関係していたりしていなかったりするので、きっと複雑に絡まりあった因果が、最終的に快刀乱麻を断つように解決されるのだろうなと思いつつ見ました。
 が、断片化された物語を繋ぎ合わせるのは億劫で、しかも浮かび上がってくる図式が、今ひとつ意外性に欠け、よもすると退屈でもありました。

後半の感想

 分かれ目となったのは、ライターでしょうか。
 あれがアドリブなのか、あるいは高度に計算された演出なのかは分かりませんが、明らかにひとつの綻びでした。そして、後から振り返ってみて、あれが綻びの起点であったことを考えれば、やはり役者のアドリブではなく計算なのでしょう
 現実と虚構、リアルとアンリアル。
 こういう言葉にしてしまうと、いかにもいかにもですが、メタ的な演出に加えて、小野賢章の存在感に溢れるナレーションが入り、まるで『ジョジョの奇妙な冒険』におけるスタンドのように、メモリーが扱われ始めてからは、もう興奮しっぱなしで、画面から目が離せませんでした
 メモリーに中二病めいたルビが振られたり、発動するのにキーアイテムが必要だったり必要じゃなかったり、メモリーが傷つくと発動できなくなったり、同時に複数のメモリーが発動できたり。
 まるで漫画の異能力物でしたが、異能力物って、一見、役に立たなさそうな能力を駆使して苦境を乗り越えるのが面白いじゃないですか。ただの、劇のワンシーンでしかなかったメモリーを、能力として活用するのは、まさにそれで、ほんとうに面白かったです。
 客の登場から、時間の操作、そして最後の締めまで、終盤の展開は、これ以上はないと感じました


 ところで、ひとつだけ気になっているポイントがあります。
 それは、自主してきた犯人の存在です。部下が真犯人であったならば、自主してきたのは、一体どこの誰なのでしょう。

終わりに

 いやあ、振り返ってみても、ほんとうに良かったですね。
 シベリア少女鉄道、他の作品にも触れてみたくなりました。