午前二時。
都会が放つネオンを受けて、空は仄かな白を残していた。星は見えない。
絶えることのない喧騒が身体を縛りつけ、凍てつく空気が咽喉を冷やし、声を奪う。
「……ッ」
擦れ声しか出ないけれど。
叫びたい名前がある。
北極に立って、その名前を大声で叫び、世界中に知らしめてやりたい。自身がどれだけその名前の持ち主を愛しているか、声を持って証拠としたい。
愛してくれる必要はない。ただ、この気持ちを受けとめて、覚えてくれているだけでいい。自身の中の気持ちがどれほどのものなのか……どれほどのものなのか、
一体、どれほどのものだと言うのだろう?
ここは北極ではなく、家から電車で三十分の夜の都会。
一体、この声は誰に届くと言うのだろう?
判らない。判らないけれど、とりあえず、叫んでみよう。
立ち上がって、ギターを構え、歌を歌う、名前を呼ぶ。愛を、歌う。