朽ちない身体。
機械の身体を手に入れて以降、一切の成長変化を終えてしまったぼく。ぼくを置いて流れた時。朽ちてゆく身体たち、忘れ去られてゆく身体たち、残ってしまうぼく。
空を粉雪が舞う。白い飛礫が、朽ちた街に降りそそぎ、朽ちたもの朽ちてゆくものを覆い隠す。ぼくは身震いする。肩に積もった雪が落ちる。ぼくは朽ちない。
風が吹く。瓦礫が落ち、雲が晴れる。電波が届き、スピーカから歌声が響く。
人の声、誰かの歌い声、感じる温もり、心が温かいのはどうしてだろう。この朽ちない身体に、心などないはずなのに。温もりを感じる心など、とうに朽ちてしまったはずなのに。
やがて隠れる木漏れ日、届かない電波、沈黙するラジオ。スピーカを雪が隠す。もう見えない。
風が吹き、頬の涙が乾く。……涙? 頬に手を触れる。流れた痕。もう判らない。
朽ちたはずなのに。
朽ちたはずなのに。
朽ちたはず……ぼくは朽ちない。