雲上ブログ〜謎ときどきボドゲ〜

オススメの謎解き&ボードゲーム&マーダーミステリーを紹介しています

ONLY DETECTIVE IS HERE

 肌寒さに何かを感じたのか夕賀恋史は、立ち上がってカーテンを開けた。そこに広がっているはずの朝焼けは、分厚い雪と風の壁に埋め尽くされている。夕賀恋史は目を細め、後ろを向いた。
「七瀬君」
 八雲七瀬はベッドの中で安らかな寝息を立てている。
「七瀬君、起きたまえ」夕賀恋史は眉をしかめながらベッドに近づき、八雲七瀬の肩を揺すった。「今やこの空間は――吹雪の山荘となった。そしてその中に名探偵である私がいる。ここまで条件が揃ってしまったら、もはや殺人事件が起こらないわけがない。私は探偵役だから殺されはしないが、君は危険だ。早く起きて帰りたまえ。防寒にさえ気を使えば、無事に山を下りられるだろう」
「先生」目を開けた八雲七瀬はかすれ気味の声で言った。「この別荘には私と先生しかいないのです、殺人事件なんて起こりようがないです」


『ある閉ざされた雪の山荘で』361文字